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仙水峠
【せんすいとうげ】


甲斐駒ケ岳と早川尾根の最北端栗沢山の間,中巨摩(なかこま)郡芦安村にある鞍部。双方から急激に切り込んで楔形に見える。東方大武川,西方野呂川支流北沢の分水界に位置する。2,264m。中生代四万十統の堆積岩と,甲斐駒ケ岳の深成岩体が激しく接触した地点。累々たる巨石のかわらになっている。岩塊の表面には地衣類が付着し,さらにその上を矮小なハイマツ・コメツガの群生が覆う。また峠の最低部や西寄りに,降水時には池沼となる低地があり,周辺に特にチョウノスケソウが多い。一見人工を加えた庭園のように見える。この池沼を泉水,またはせんずい(山水)と呼んだのが当峠の由来であろう。古代から,大武川を遡行して北辺に出て三峰川の上流を信州に抜ける山道があったことが想像され,修験者・猟師・間諜などの利用したところで,当峠の想像を絶した美しい風景にせんすいの名前を与えたのであろう。現在大武川への道は廃道となっているが,北沢への道は大いに利用され,北沢小屋まで1,000m・30分,北沢長衛小屋まで1時間。また峠から甲斐駒ケ岳頂上まで3時間,栗沢山まで1時間半。ともにはなはだしい急坂である。南アルプスでは最も著名な峠の1つであって,特に,北方の駒ケ岳摩利支天峰の眺望に優れる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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