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田原の滝
【たわらのたき】


都留(つる)市十日市場の桂川にかかる高さ18mの滝。近くに田原浅間神社がある。和銅年代の地名から佐伯滝ともいい,また白滝ともいわれた。天和2年12月28日江戸の大火で芭蕉庵が類焼し,約半年ばかり松尾芭蕉は谷村の高山麋塒を頼って流寓した。その折,当滝を訪れて「勢ヒあり氷消ては滝津魚」の句を吟じた。芭蕉の真跡については安永3年8月13日谷村春秋居(希言)を訪ね,「爰に遊びてうちつけに拝す。誠に類なき滝の吟なりき」と「袖中日記」に書きとめ,「滝つ魚けふこを見たれ霧の隙」の句を吟じ,翌14日滝を見物し「滝白し岩根に懸る秋の雲」と詠じた。森島弥十郎も「いきほひあり氷柱消ては滝津魚」の句を掲げ,「真跡利八が家に存せり」と記している。ともかく弥十郎の記した句が真跡であると断定してよい。この真跡を刻んで滝の近くにたてられていた句碑が大正初年大雨増水のため流失し,今は橋のたもとに飯田蛇笏の筆跡で,「勢ひあり氷消えては滝津魚」と彫られた句碑がたっている。おそらく「新虚栗集」に基づいたものであろう。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7097590