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月夜の段
【つきよのだん】


南巨摩(みなみこま)郡南部町と静岡県の境下十枚山(1,732m)の中腹,東斜面の1,110~1,300m付近に広がる緩斜面。相又累層からなり,準平原状の高原の地形をなす。明治期までは針葉樹の密林で,昼もなお薄暗く,あたかも月夜にいるようであったことから名が起こった。身延山地から安倍山地には,バラノ段・大光段・中の段など高原状の平坦地を段と呼んでいるが,当地が最もその特徴をみせる。山麓では年間2,000mmを超す降水量と,年平均気温14℃という温暖多雨の地域のため植物の生育が旺盛で暖地性のシダ類の下草や手入れの行き届いた林地が各地にあって,なだらかな山肌は,南アルプスや八ケ岳など県北の山地とは対照的。中生代と新生代の地層の間に断層がみられ,東部の戸栗川支流の温井(ぬくい)川に沿って糸魚川静岡地質構造線がほぼ南北に走る。第2次大戦後まもない昭和22年に18戸の入植者があったが,交通と生産性の面から2年後には全員下山し,開拓地は,丈を超す大笹や篠竹の原野と化し,わずかに戸栗川の支流南俣川源流部の銀明水の泉を利用してワサビ栽培が行われている。当地への道筋は,国道52号の南部から戸栗川を遡行し,十枚山麓民宿村・戸栗川大堰堤から剣抜大洞林道をたどり,キャンプ地にも利用されている名勝地。十枚山の稜線にある十枚峠・地蔵峠越えに静岡県静岡市の安倍川流域に連絡する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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