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花水坂
【はなみずざか】


日野坂とも呼ばれる。北巨摩(きたこま)郡長坂町の国鉄中央本線長坂駅の南方で,長坂町日野から同郡白州(はくしゆう)町台ケ原に通じる途中の七里岩浸食崖の急坂。そのすそを釜無川が東流する。古くから信州路として若神子(わかみこ)(須玉町)から渋沢(長坂町)を経て台ケ原を結ぶ要路で,昔は人馬の往来でにぎわったという。七里岩崖上にある白砂山の南麓で,釜無川主流に尾白川・大深沢川が合流する地点を花水というが,花水とは,「国志」によれば,白砂山のサクラの花が釜無川に映じた景勝が起源といわれ,「山水石岩最モ風致アリ昔時ハ岩上ニ亭子ヲ構ヘ山桜数株ヲ植ユ花時ハ爛曼トシテ水ニ映ズ因テ花水ノ名アリ」と見える。当坂周辺は,昔から観桜,富士山の展望の適地として知られ,富士見三景の1つで,「御阪・花水・西行とを三富士とて称誉せり」(甲斐叢記)といわれ,探勝者も多かった。江戸初期の歌人,烏丸光広卿は,「立おほふ霞にあまる富士のねに思ひをかはす山桜かな」(国志)の和歌を伝える。織田信長が,天正10年に当峠を通り,「信長公記」にも「四月三日,大ケ原御立ちなされ,五町ばかり御出候へば,山あひより名山,是れぞと見えし富士の山,かうかうと雪つもり,誠に殊勝,面白き有様,各見物,耳目を驚かし申すなり」とその情景が記されている。当坂上にある白砂山には熊野神社が鎮座し,当坂を一の鳥居と称する。峠の北西に白州町花水の集落がある。かつては片颪と称したが,坂名にあやかって改名したといわれる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7098085