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藤垈の滝
【ふじぬたのたき】


瀬立不動・芹沢不動ともいわれる。甲府盆地南部,東八代(ひがしやつしろ)郡境川村の滝戸山のふもと,大窪地内の向昌院境内にある。当滝の水は約30m上方にある12本のスギの大木とケヤキの根元近くから湧出し,これを引いて高い石垣の上から樋で落水する人工的な滝である。「裏見寒話」に「府中ヨリ三里,温泉ニ非ズ瀑布也,石ノ不動アリ,此ノ滝デ頭ヲ打タセレバ生涯頭痛ヲ患ズ,此処ハ山ノ蔭ニシテ日ノ影ヲ見ズソノ冷ヤカナルコトタトエナシ六月炎天ニ行ク,土用中綿入ヲ着テ凌グト云フ」とあり,水温15℃で,古くから頭痛,精神病患者の治療に使われた。「東八代郡誌」に「芹沢不動堂は新羅三郎義光の開基にして当院(向昌院)の東一丁余にあり老樹うつ蒼として幽邃の景趣に富めり,清泉湧出し懸りて八条の飛瀑となる。世に藤垈の滝と称し夏時納涼の客多し」とある。昭和初期まで頭痛患者の治療に利用されてきたが,今日は避暑地として多くの客でにぎわう。向昌院には松尾芭蕉や北野道等の句碑がある。昭和13年に訪れた井伏鱒二は当滝を「夏のエアポケット」と評した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7098255