100辞書・辞典一括検索

JLogos

13

梓川
【あずさがわ】


犀川上流部の通称名。槍ケ岳より流出し,松本市街西方で奈良井川と合流するまでの約60kmをいう。この河川名は,北アルプス観光や水力発電・街道交通などの面で広く用いられ知名度が高い。源流から奈良井川との合流点までは,河床の勾配が緩やかな区間と急勾配の部分が対照的である。槍ケ岳より上高地上流の徳沢までは急勾配をなすが,流量が少ないため浸食谷の形成はみられない。上高地は小盆地状のため,川の流れは緩やかで,上流からの砂礫が堆積して河床が上昇し,氾濫の危険があるほどである。清流にかかる河童橋は有名。盆地の下流部には大正4年焼岳の噴火でせき止められた大正池があるが,年々土砂が流入して現在は0.1km(^2)ほどに縮小した。これから下流は急勾配をなし,松本盆地への出口に当たる南安曇(みなみあずみ)郡安曇村の島々までは深い峡谷をなし,両岸は急峻な山々がせまる。島々より奈良井川合流点までの松本盆地では,島々を頂点に広大な扇状地形を形成し,梓川扇状地と呼ばれる。梓川が注目されるようになったのは,明治期に北アルプスへの近代登山が盛んになってからである。明治初年までは,梓川は上高地で伐採された材木の流送に利用されるだけであった。奈川との合流点から上高地までは深い浸食谷をなし,両岸に断崖がせまり道路の建設はできなかった。昭和8年梓川沿いに上高地までの車道が開通し,北アルプス登山の本道になった。深い渓谷を形成する梓川は新緑と紅葉の観光地としても注目され,安曇村の沢渡(さわんど)より上流は両岸の絶壁に懸かる樹木がことに見事である。沢渡から下流島々までの間は,両岸に若干の段丘地形が形成されているので,これらの小平坦面に小集落が点在するが農耕地はほとんどない。また梓川には,大正14年京浜電力により水力発電所が開発されて以来,現在は東京電力の9発電所と中部電力・昭和電工の計11の発電所がある。この中には落差450mの霞沢発電所や日本第2の出力をもつ奈川渡ダムの安曇発電所などがある。松本盆地に出てからは河床が広がり,扇状地上の水田への用水が取水され,稲核(いねこき)ダムからは松本盆地西半分を灌漑する幹線用水路が建設されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7098967