100辞書・辞典一括検索

JLogos

25

木曽川
【きそがわ】


県南西部を流れ,木曽谷から濃尾平野(愛知県・岐阜県)を経て伊勢湾に流出する1級河川。木曽郡木祖村北端の鉢盛山鉢伏国有林より流出し,全流長約193kmのうち,県内は岐阜県境までの96.901km。県内での主な支流は,上流右岸より黒川・王滝川・小川・阿寺川・柿其(かきぞれ)川など,左岸は木曽駒高原を流下する正沢川をはじめ滑(なめ)川・伊奈川・与川・蘭(あららぎ)川など。鉢伏国有林内を流れる上流部は味噌川とも呼ばれ,本州中央高地の主要な分水界をなす鳥居・境両峠の南斜面一帯を南流する。地形を含む自然環境は,木曽谷は基盤が花崗岩であるため,河床は全体に白色の礫が多く谷が深い割には明るい。また寝覚の床に代表されるように,花崗岩を浸食した峡谷や景勝地にめぐまれている。河谷は本・支流とも深いV字谷の所が多い。右岸の黒川・王滝川・阿寺川・柿其川,左岸の伊奈川・蘭川渓谷などはいずれも谷が深く,阿寺峡谷・柿其峡谷・伊奈川峡谷などはすぐれた峡谷美で知られる。木曽川の支流は右岸と左岸で対照的な勾配をなす。右岸の支流は,御嶽山周辺から流出する王滝川とこの支流の西野川に示されるように勾配は比較的緩やかで,西野川上流部や王滝川中流部では堆積による小谷底平地さえ形成されている。これに対し,左岸の木曽山脈より流下する支流は全般に流長が短く,河床は急勾配をなし,荒れ川の様相をなしている。木曽駒ケ岳より流下する正沢川・滑川あるいは南駒ケ岳などから流下する伊奈川などは沿岸に崖錘状扇状地を形成し,洪水常襲地の感がある。木曽川の集水域は年間降水量が2,500~3,000mmの多雨地域で,この降水の大部分が梅雨から台風期の間に降るため,これも急勾配の河川の洪水をもたらす原因になっているが,それだけに流量も多い。このため大正8年賤母(しずも)発電所の完成以来多くの水力発電所が設けられた。さらに昭和18年王滝川上流に三浦(みうれ)ダムが築造されたのをはじめ,牧尾ダム・常盤ダム・木曽ダム・読書ダム・山口ダムなどが建設され,現在も本流上流部に味噌川ダムが建設中である。これらの貯水池は各発電所の出力を高めるとともに,愛知県名古屋市をはじめ中京圏一帯の上水・工業・農業用水源をなしている。木曽川の植物景観は,王滝川から下流の渓谷はヒノキが多く,このため山々は1年を通じて濃緑色で,紅葉の美しさは一部にしか見られない。王滝川合流点より上流部の谷はカラマツが多く,これに広葉樹が混在し,下流部のヒノキ地帯とは植物景観は一変する。木曽川水系の流路には,木曽五木の筏流しの遺跡を残す王滝川支流の鯎(うぐい)川下流や,義仲愛妾の伝説のある木曽郡日義(ひよし)村の巴ケ淵,同郡木曽福島町・上松(あげまつ)町の中間地の木曽の桟(かけはし)など,歴史を物語る名勝地や,峡谷美のすぐれた本流の寝覚床,阿寺渓谷などがある。現在木曽川の水量は各所に設けられたダムからの取水で非常に少ない。しかし近世には,木曽木材の筏流しに利用されて水運上重要な役割を果たし,京都や名古屋へと移送された。中山道が木曽川に沿って通じていたため,木曽川筋には宿場・関所・番所など中山道交通に関する史跡も多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7100321