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小渋川
【こしぶがわ】


県南東部を流れる1級河川。流長35.82km。南アルプスの主峰赤石岳と荒川岳の山頂近くより流出し,上伊那郡中川村・下伊那郡松川町の境を流れて天竜川に合流する。赤石構造谷を北流する青木川と南流する鹿塩(かしお)川がほぼ南北に直線状をなして本流に合流するほか,塩川・四徳川などが主な支流。南北に流れる鹿塩川と青木川を境に,東側は外帯山地,西側の伊那山地は花崗岩よりなる内帯山地である。このため小渋川中流左岸は崩れやすく,昭和36年の豪雨では青木川合流点近くの大西山が大崩落し,死者・行方不明者55人,重軽傷者642人の大被害をもたらした。また南流する鹿塩川と塩川は,この名が示すように塩分を多く含んでいる。塩川沿いには井戸水から製塩する事業が明治13年頃行われ,製塩会社まで設立されたが,明治末年政府に買収された。小渋川の本・支流は,中流より上流にかけては地質構造線に沿って流れるが,青木川や鹿塩川の合流する下伊那郡大鹿村落合からは流路を西に向け,伊那山地を横断する先行性河川となる。この横断部は大峡谷をなし,ここに昭和44年小渋ダムが築造され,発電・農業用水・洪水防止などの多目的用途を目指している。ダム付近は人造湖と峡谷で,自然景観にすぐれる。本流の上流は赤石山脈中に深い浸食谷をなし,現在は典型的な過疎あるいは挙家離村の進む隔絶山村だが,南北朝期には後醍醐天皇の第五皇子宗良親王の御在所となった所で,この渓谷最奥の釜沢集落の上流には御所があったという御所平の地名が残る。地質構造線に沿って南・北流する鹿塩川と青木川の谷は,狭長な谷底平地をなし,この川沿いが中世から鉄道が開通する明治中期まで,諏訪や伊那の人々が遠州に出る重要な街道であった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7100724