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犀川
【さいがわ】


県中央部を流れる1級河川。流長157.657km。北アルプスの主峰槍ケ岳より流下し,上高地・松本盆地などを経て,筑摩山地を横断し,長野盆地で千曲川と合流する。県内では,松本市街地西方で奈良井川を合流する地点から千曲川との合流点までの約100kmを犀川と慣習的に呼び,奈良井川合流点より上流部は梓川と呼んでいる。奈良井川合流点より下流部での主な支流は,右岸上流より奈良井川・会田川・麻績(おみ)川,左岸は穂高川・高瀬川・土尻川・裾花川など。流域は,上流では松本盆地,中流部では筑摩山地,下流部は長野盆地になる。松本盆地では,北アルプスから流下する烏川などの小河川が形成する扇状地により本流は盆地の東縁部に押しつけられた形になり,北からの高瀬川や犀川上流部の梓川などの大扇状地が複合している。松本盆地の最低部をなす東筑摩郡明科(あかしな)町で盆地内の諸河川を集めた犀川は,筑摩山地域を北東流する。この流路は典型的な嵌入蛇行で,山地域に比高500mを越す深い渓谷をなしている。この山地から長野盆地への出口である長野市の小市集落を頂点に,千曲川との合流点までは扇状地形を形成する。筑摩山地域では両岸の山地が急斜面をなし,降雨時には犀川に斜面の表土が流れ込むため,千曲川に比較すると土砂の流出が激しい。また深い渓谷のため,戦後ダムが建設され,明科から小市までの犀川は生坂・平・水内・笹平・小田切の5ダム湖で連続している。渓谷には山清路峡のような渓谷美もあるが,沿岸の町村は過疎に悩み,急斜面での畑作は生産性がきわめて低い。国道19号は蛇行する犀川に沿って走り,長野・松本両市を結ぶが,凝灰岩などの基盤岩から構成された第三紀層地帯を通り,上層の表土は風化した粘土質の火山灰土であるため,降雨の度に地滑りや崩落が随所に発生する。犀川の舟運は,天保3年から実施され,松本市と上水内郡信州新町間に運行された。信州新町・長野間には遷急点があり,舟運には適さなかった。下りはおよそ7時間で,米・酒・炭・材木などが主な物資であった。新町から松本へは舟に縄をつけ,人夫が両岸沿いに引いた。この舟運は篠ノ井線開通後は明科~新町間となり,昭和12年国道19号が開通し,さらに戦後のダム建設により,昭和30年代に消滅した。なお弘化4年の善光寺大地震の際に崩落した岩倉山の地滑り地形は現在も明瞭に観察できる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7100850