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高瀬川
【たかせがわ】


県北西部を流れる1級河川。流長47.41km。槍ケ岳山頂北側直下より流下し,松本盆地の東筑摩郡明科(あかしな)町で犀川に合流する。本流が大きい割には,支流には大きな川は少なく,主なものは鹿島川・農具川・籠川。上流部は燕(つばくろ)岳などの北アルプス表銀座と,槍ケ岳・三俣蓮華・針ノ木岳などの裏銀座に挟まれ直線状に北流する。高瀬ダム付近からの中流は流路を東に向け,大町市街より下流は南流し,北アルプス表銀座の北半分をとり囲むように流れる。中流部の大町ダムから上流は深い峡谷をなし,特に七倉ダムより上流部は県下最大の峡谷を形成する。表銀座・裏銀座の3,000m級の山脈に東西を挟まれた高瀬渓谷は深さ1,000mに近い谷を刻み,北アルプスの基盤岩である花崗岩地域を急流で流れ下る。このため河川勾配も急で,約20kmで落差650mに達する。大町ダムで平地に出てからは,犀川との合流点まで典型的な扇状地を形成し,上流よりの花崗岩の大小のブロックを堆積している。この結果,河床の上昇も著しい。また扇状地上では絶えず氾濫し,荒れ川の様相を呈する。河水は,最上流部近くで硫化水素を含む温泉が豊富に河床から湧出しているため,コバルト色を呈している。中流部から上流にかけて温泉の湧出が多く,本流と湯俣川の合流点には湯俣温泉がある。この付近の渓谷にはカモシカの姿がときどき見られ,新緑と紅葉が美しい。また中流部には葛温泉がある。高瀬川はたびたび洪水をおこすため,治水・発電・農業用水などのため中流部には大町ダムが,その上流には東京電力の七倉・高瀬の両ダムがある。高瀬ダムの右岸に,東京電力が山をくり抜いて最大出力125万kwの地下発電所を建設した。これらのダムにより洪水の危険は少なくなった。大町ダムより下流は広い河床に砂礫が堆積し,勾配が小さくなる北安曇郡松川村辺りよりの河床には礫が少なくなり,花崗岩特有の白い河原の風景を展開する。犀川との合流点付近は,扇状地の地下水が湧出し,これを利用したワサビ栽培が盛ん。籠川沿いに黒部川第4ダムヘの観光道路が走り,同川は鹿島川とともに本流同様広い扇状地を形成している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7101677