100辞書・辞典一括検索

JLogos

18

天竜川
【てんりゅうがわ】


県南部中央を流れ,愛知県・静岡県を経て太平洋に注ぐ1級河川。流長約216km,うち県内は118.373km。諏訪湖北西部より流出し,上流より合流する主な支流は,右岸では横川川・小黒川・太田切川・与田切川・松川・阿智川・和知野川・早木戸川など,左岸では三峰川・小渋川・遠山川などがある。流路は西側の木曽山脈と東側の伊那山地に挟まれ,これら山地・山脈の走行と並行して南流する。このうち,飯田市南部の天竜峡までは両岸に平地を形成しているが,天竜峡以南は,南西方向に走る伊那山地と赤石山脈を横切るため深い峡谷をなしている。したがって天竜峡以北の流路は縦谷で,以南は横谷になる。縦谷の部分は流路の屈切は少ないが,天竜峡以南はかなり曲流(蛇行)している。これは横谷部を南西に走る伊那山地や赤石山脈が隆起し,曲流は隆起以前ここが平坦地であったことを意味する。このことから天竜川は先行性河川である。天竜川の流域一帯は地盤の隆起を示す地形が見事に発達している。峡谷の曲流のほか,両岸には典型的な段丘地形が形成されている。特に東側の伊那山地では現河床より400mの高所までの間に6~7段の段丘面が存在し,これらの平坦地が天竜川の左岸(地元では竜東と呼ぶ)の集落立地や農耕地の重要な場所になっている。西側木曽山脈のふもとにも竜東同様の段丘が存在するが,木曽山脈より流下する急峻な大小の河川が流出した砂礫が段丘面上に崖錐や扇状地をなしているので,竜東ほどの典型的段丘は少ない。天竜川流域は年間降水量が2,000~3,000mmに達する山地が多く,流量は豊かである。しかしこれらの降水は夏季に集中するので,洪水が起きやすく,古くから暴れ天竜といわれてきた。木曽山脈・伊那山地ともに日本内帯山地に属し,基盤岩石は花崗岩である。このため山地は崩れやすく,東西から注ぐ支流はいずれも花崗岩礫の河床で,日射を照り返し明るい景観を呈する。流量が多いため,近世から重要な水運路であった。水運の始まりは,慶長12年京都の角倉了以が大仏殿を改修するため伊那の木材搬出で河床を浚渫したことによる。水運は内陸の伊那盆地と東海地方を結ぶ役目をなし,上流の上伊那郡辰野町平出から河口までであった。これらの通船によって,近世中期までは江戸や大坂へヒノキ・サワラなどの木材のほか,干柿・元結・林産物が搬出され,東海地方からは塩・綿・干魚などが移入された。観光用の遊覧船は幕末からである。現在の舟下りは,下伊那郡高森町の市田地区と唐笠間の30kmである。昭和10年完成の泰阜ダムをはじめ,平岡ダム・佐久間ダムなどの水力発電と,段丘・扇状地上の乏水を補うため多くの用水が取水されたが,なかでも昭和3年に完成した西天竜用水路はこの代表である。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7102015