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奈良井川
【ならいがわ】


県中央部を流れる1級河川。流長51.127km。木曽山脈北端の茶臼山より流出して北流し,松本市街の北西で,梓川(犀川上流)に合流する。高瀬川とともに犀川最大の支流で,右岸では上流から矢沢川・牛伏寺川・薄(すすき)川・女鳥羽(めとば)川などを合流している田川を,左岸では小曽部川・鎖川を合流し,松本盆地南西部一帯に扇状地を形成している。塩尻市街南西の宗賀から上流は浸食谷をなしているが,ことに鳥居峠ふもとの木曽郡楢川村の奈良井から源流まではV字形の峡谷をなす。この峡谷部を地元では川入(かわいり)と呼び,小集落の山村が点在する。江戸期は伊那と木曽を結ぶ物資輸送路に利用された。現在は奈良井ダムが建設され,松本盆地南西部の灌漑用水や上水道に利用されている。楢川村・塩尻市の境界辺りより,両岸に段丘を形成するが,このうち塩尻市街西方の桔梗ケ原は上位段丘面になる。この辺りの河床は桔梗ケ原面より100m近い標高差があり,見事な隆起地形を示している。桔梗ケ原面は乏水地のため明治初期になってようやく開拓が始まり,それ以前は原野であった。洗馬・郷原など北国西街道に沿う宿場は桔梗ケ原より一段下位の段丘面上に位置する。松本市街地南郊の旧芳川村辺りからは奈良井川扇状地の末端部に当たり,水田地になっている。奈良井川は梓川左岸のいわゆる安曇野の水田地帯にとっても重要な水源をなしている。梓川左岸に展開する梓川扇状地の水田灌漑用水路のうち,最も規模が大きい拾ケ堰は文化13年にできたもので,梓川の合流点に近い奈良井川より取水し,約600haが開田された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7102441