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三峰川
【みぶがわ】


県中央南東部を流れる1級河川。流長52.73km。南アルプスの主峰仙丈ケ岳の南西部から流出し,上伊那郡長谷村の市野瀬集落からは中央構造谷に沿って同郡高遠(たかとお)町まで北流し,ここで流路を直角に西に向けて天竜川に注ぐ同川最大の支流。支流は多く,上流部では北荒川岳より流出する北荒川・荒川や小瀬戸谷・丸山谷・塩川などを合流し,中央構造谷に入ってからは仙丈ケ岳・駒ケ岳・入笠山などより流出する黒川とこの支流の戸台川・小黒川を,さらに山室川や藤沢川などを合流する。市野瀬から上流部は緑色の結晶片岩が多く,南アルプスの山腹をV字形の険峻な谷を浸食して流下している。平家落人の伝説がある浦集落もこの渓谷にある。この集落の奥にある奥浦をはじめ,渓谷中の集落は昭和30年代までは国有林の伐採などで生活していたが,その後はほとんど挙家離村し,廃村状態にある。三峰川は黒川も含め豪雨時にはしばしば大量の土砂を流出して氾濫を起こす。南アルプスの頁岩や結晶片岩などが風化しやすく崩れやすいためである。県は昭和33年に三峰川総合開発の一環として,長谷村の中心部中非特に美和ダムを構築し多目的に利用した。しかし川の土砂流出が激しく,現在までのわずが30年間に総貯水量の3分の1余りに当たる約1,000万m(^3)が埋まってしまった。毎年河床を浚渫しているが土砂の流出には及ばない。市野瀬から高速までは,東西を南アルプスと伊那山地に挟まれ,狭長な谷底にわずかに平地があり,この部分が長谷村の貴重な耕地となっている。三峰川の主要な支流である山室川左岸の鹿嶺高原には,過疎村振興のため廃屋を利用した別荘があり,三峰川上流部の浦集落も大都市居住者の別荘に利用されている。高遠から西流し天竜川に合流する間は,左岸に広い扇状地を形成する。右岸には扇状地面より一段高い天竜川の段丘があり,扇状地は主にこの南に展開し,水田が多い。深い山中を流れる三峰川は,すぐれた山水の自然景観で三峰川水系県立公園地域に指定されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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