100辞書・辞典一括検索

JLogos

20

稲生沢川
【いのうざわがわ】


南伊豆を流れる2級河川。婆娑羅(ばさら)山の南東斜面に源を発し,ほぼ下田市域を流域として東流および南流し,下田市街地の東端で下田湾に注ぐ。流長15.1km・流域面積77km(^2)。主な支流には,賀茂郡河津町域に発し,南流して荒増(あらぞう)で本流に合する稲梓(いなずさ)川,大鍋越に発し,口村でこの稲梓川に流入する須郷川,蓮台寺(れんだいじ)温泉の谷を東流し,立野で本流に合わさる蓮台寺川などがある。上流から箕作(みつくり)付近まではほぼ直線状に東流し,川沿いには谷底平地や低い段丘が発達するが,箕作下流で直角に南に折れるとそこから立野まではむしろ峡谷状をなし,ここには唐人お吉が身投げしたと伝えられる千鳥ケ淵もある。立野より下流では谷底平地の幅が広くなり,その下流右岸に下田の密集した市街地をのせる。ここでは河川勾配が緩いため,安政元年の大地震の際には津波は中村~立野間にまでさかのぼり,大きな被害を出した。河口から柿崎にかけての下田港は,避難港として現在でも活況を呈するが,往時は西に駿河(するが)湾,東に相模(さがみ)灘を控え,ほかに良港がないこともあって,東西を往復する船舶の出入りが繁く,大いににぎわった。特に下田奉行所の設置以来,下田港は風待ち港としての役割のほか,江戸防衛の任をも付与されていたし,また嘉永7年には日米和親条約が結ばれて,即時開港場となった。稲生沢の名は「稲のできるところ」の意であり,また「イノウはイナの音訛したもので,伊那に稲生を当てたもの,伊那は一番良い土地」の意であるともいう(ふるさと百話)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7109872