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猪之頭湧水
【いのがしらゆうすい】


富士宮市北部,山梨県境に近い,標高700mの猪之頭周辺にみられる,富士山西麓最大の湧水地。富士山の裾野は,わが国でも最大の地下水流がみられ,富士・富士宮を中心とする岳南(がくなん),沼津・三島地区,御殿場周辺および山梨県富士吉田市一帯に集中し,総湧水量毎秒50tに達する。猪之頭周辺の湧水量は,毎秒5.6tに達し,富士山麓の中でも最大の数値を示している。富士山麓の湧水地点は,下位に古富士火山の集塊岩質泥流層があり,緻密であるため透水性に乏しい。この泥流層の上に,透水性に富む新富士火山の溶岩流や火山砂礫層が堆積している。猪之頭周辺は,この透水性の違う地層が露出しているため,一大湧水地を形成。猪之頭の湧水は,富士山からの伏流水のほか,芝川・富士五湖からの伏流水もあって,湧水の水温は,地区により異なる。一般に,猪之頭地区の東側地点では,夏11℃・冬9℃であるのに対し,西側地点では,夏13℃・冬11℃である。年10℃前後の一定温度を保ち,湧水する豊富な清流を利用して,養鱒やワサビ栽培がみられる。特に猪之頭に,昭和11年県水産試験場の試験研究機関として,静岡県富士養鱒場が開設された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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