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狩野川
【かのがわ】


1級河川。伊豆半島のほぼ中央,天城(あまぎ)山脈に源を発し,東・西両伊豆山地から多くの支流を集めつつ北流し,下流では黄瀬(きせ)川など北からくる支流を合わせて,沼津市我入道(がにゆうどう)で駿河(するが)湾に注ぐ。流長46km・流域面積852km(^2)。この川の上・中流域の分水界は,北に開いた巨大な釣針型の平面形を呈していて,北西の達磨(だるま)山から西伊豆の稜線沿いに南へ延び,仁科(にしな)峠からは南に弧をえがいて東方の天城峠・万三郎岳へと続き,さらにそこからは東伊豆の稜線沿いに北に向かい,冷川(ひえかわ)峠・玄(くろ)岳・十国峠を経て箱根火山の外輪山を三国山にまで延びている。この間の主な支流には,西伊豆の稜線に発して東流する猫越(ねつこ)川・吉奈川・船原川・柿木川・修善寺(桂)川などがあり,また天城火山や東伊豆の稜線,箱根火山の外輪山に発して西流する支流に長野川・大見川・古川・深沢川・柿沢川・来光川・大場(だいば)川などがある。一方最大の支流である黄瀬川は,御殿場(ごてんば)市街地周辺の湧泉に源を発し,富士山や愛鷹(あしたか)山の東斜面からの久保川・佐野川・桃沢川などの支流と,芦ノ湖に発して箱根火山の外輪山を流下する深良(ふから)川(箱根用水)ほかの支流を合わせつつ,富士・愛鷹火山と箱根火山との間の凹地を直線状に南流して,沼津市香貫(かぬき)山の北麓で狩野川本流に合流している。そのほか長さではわずか1.2kmの支流にすぎないが,富士山麓の湧泉群中では最大の湧水量を誇る柿田(泉)川もあり,ここでの湧水の一部は沼津市や三島市・熱海市の上水や柿田川工業用水などに取水されている。本流の源・上流域の天城山一帯は国有林となっていて,スギ・ヒノキの産が多く,また特産の天城ワサビの栽培も天城湯ケ島町から中伊豆町にかけての上流渓流に多い。本流の上流にかかる浄蓮の滝は天城山中第一の瀑布であり,本流ではほぼこの付近から,支流の大見川では筏場付近から谷底平地や河岸段丘が断続するようになる。この谷底平地は大仁(おおひと)付近からは幅を増し,さらに韮山(にらやま)町南条あたりから下流になると,いわゆる田方(北伊豆)平野となって低平な三角州性低地に移り変わっている。この下流低地では黄瀬川のつくった三島(黄瀬川)扇状地が北から南へ張り出してくるので,狩野川の本流は香貫山の北麓に押しつけられたかのような形となり,沼津市街地でさらに西から南へと向きを変えて我入道で駿河湾に流入している。昭和33年9月26日,この川の流域では狩野川台風に伴う上・中流域の集中豪雨で,多数の人的・物的被害を出した。特に修善寺橋~南条間では,橋の流失による異常洪水のために曲流外側の破堤によって,人的被害の約9割,流失家屋の約7割が低地の数集落に集中発生した。また上流では中伊豆町の山崩れ被害が大きく,逆に下流の田方平野の一部では長期間にわたって湛水した。伊豆長岡町から沼津市江の浦湾に抜ける念願の狩野川放水路は,一部計画変更して昭和40年に完成した。狩野川流域には湯ケ島・修善寺・大仁・伊豆長岡・古奈(こな)・韮山・畑毛など多くの温泉地があり,また修善寺町・韮山町・三島市などの史跡もあって,保養・観光地としてにぎわいをみせている。なお狩野の名については,「天城山は往昔,狩野山と呼ばれたが,その狩野(かの)は火野(かの)に通じ,焼畑地名である」(ふるさと百話)とする説もある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7110738