牛谷坂
【うしたにざか】

宇治坂・浦田坂ともいう。伊勢市桜木町と浦田町との間にある坂道。「古昔は岩路で険しく纔に人馬を通すほどに過ぎなかったが，中世までの内宮参道は，この外に無かったものらしい」（宇治山田史）と記される。墓地があり参宮道路にはふさわしくなかったが，道程が近く，長峰ではほかに適切な道がなかったため，通行人が多かった。延宝２年内宮長官藤浪氏富がこの難路を開削。元禄10年山田奉行の命により宇治年寄等が改修。文化２年古市町千束屋りと女が費用1,000余両を要して，中之地蔵から260間（約468m）・幅８間（約14.4m）の道路とした。これが現在の坂道である（宇治山田史）。坂名の由来は，宇治・浦田に属するので宇治坂・浦田坂，また牛谷坂を略して谷坂ともいい，「牛馬が斃レタルヲ棄テシ所ナルヲ以テ自然ト呼来レルカ」（伊斎旧蹟聞書）によっている。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7125461