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大杉谷
【おおすぎだに】


大杉峡谷ともいう。多気郡宮川村南西部にある峡谷。吉野熊野国立公園の一部で,国天然記念物。宮川上流で約40kmにわたる峡谷。流域の山地にスギの大木が多いことにちなむ谷名。宮川ダム近くの大杉神社には昭和30年県天然記念物に指定された直径約3m・樹高40mの県下最大の巨杉が神木として祀られている。地質上は西南日本外帯に位置し,わが国最古の秩父古生層に属する。日本有数の多雨地で年間降雨量4,800mmを超える。水量も多く浸食が激しくV字谷をつくる壮年期地形で,両岸には断崖・絶壁が続き本支谷合わせ100近い滝がある。景勝地も多く本谷では隠滝・光滝・七ツ釜滝・平等嵓,支谷では千尋滝・ニコニコ滝・堂倉滝・与八郎滝・シシ淵・牛鬼淵・涼石岩屋などがある。植物分布は,標高700mの七ツ釜から下流は暖帯性常緑広葉樹林帯に属し,七ツ釜から上流は落葉広葉樹林帯に属する。水源の標高1,695mの日出ケ岳付近は亜寒帯性針葉樹林帯に属する。千尋谷・堂倉谷・不動谷にはモミ・ブナ・ツガなどの原生林が見られる。樹陰や岩壁上にはイワチドリ・イセラン・ケイビラン・キシュウラン・クサノホウバノラン・センダイソウ・クサヤツデなどが見られ,大杉谷七草と呼ばれる。動物はニホンザル・ツキノワグマ・ニホンカモシカや県天然記念物の大台ケ原サンショウウオが知られている。周辺は古くから林業が盛んで伊勢神宮の式年造営用の御杣山があったことで知られ,嘉元~元徳年間・天文~寛政年間の2期にわたり檜材が造営に使用された。明治23年には官有林は皇室付属地に編入され,同38年には千尋谷で最初の造林が行われた。現在は千尋滝から上流域の約7,000haは国有林で,大阪営林局尾鷲営林署が管理する。林道の総延長は約51kmで,北牟婁(きたむろ)郡海山(みやま)町の大河内川沿い水呑峠越えの大杉林道,往古川沿い花抜峠・千尋峠越え堂倉への大台林道が幹線である。堂倉谷・不動谷には資材置場・宿泊施設がある。ヒノキ・コウヤマキ・モミ・ツガ・トガサワラの多い地域1,440haは学術参考・風致・精鋭保護林として指定されている。昭和11年には吉野熊野国立公園に指定された。昭和47年には動植物の分布・地形に特色があるとして59km(^2)が国天然記念物に指定され保護されている。峡谷の美しさは黒部峡谷に匹敵するといわれ訪れる人も多い。大台ケ原への登山道が峡谷に沿っており,多くの桟道・梯子・釣り橋があり,釣り橋は60mのものもある。近年登山道・探勝路も整備され,峡谷の中ほどの桃ノ木には昭和32年山小屋が完成し,登山者の便を図っている。大台ケ原山上まで宮川ダムから2日間の行程にある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7125664