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木津川
【きづがわ】


淀川水系の幹川。三重・奈良・京都の1府2県にまたがり,京都府八幡市で宇治川・桂川と合流して大阪湾に注ぐ。1級河川。流路の総延長は671km,うち幹川延長147km・流域面積は1,596km(^2)に及ぶ。名賀郡青山町の布引山地に源を発して上野盆地を北西流して服部川・柘植(つげ)川を合わせ,阿山郡島ケ原村山管までが当県域の流路。京都府相楽郡大河原村で比奈知川・青蓮寺(しようれんじ)川・宇陀(うだ)川を支流に持つ名張川と合流,淀川に流入する。木津の名は木の港の意であり,奈良期,上流の伊賀から平城京造営などに必要な木材を大量に筏で流し,京都府木津町で陸揚げした(相楽郡誌)。古来,大坂・大和地方との門戸として伊賀地方への交通の動脈であった。「相楽郡誌」によれば「明治二十九年以来,鉄道郡内を四通するに及び,貨物の大半は之に吸収せられ,帆舟は大いに減退し,四十一年に至りては小廻船大小流通百九十四隻となれり」とあるが,明治末期衰えたとはいっても200隻近い川船が木津川を上下していた。慶長年間,角倉家(角倉了以)は上野城主筒井定次の要請により木津川上流の船路を開き,寛文年間,幕府および津藩に願い出て,大河原以東の通船に関する権利を得,城下長田橋まで川底をさらい,高瀬舟20隻を備えたという(上野市史)。当河川の利用はほかに,明治37年の厳倉(いわくら)水電株式会社(500kw),馬野発電所(300kw)をはじめ,現在の阿保(あお)(400kw)・比奈知(800kw)・青蓮寺(2,100kw)・高山(6,000kw)の各発電所をはじめ,宇陀川の室生ダム,青蓮寺川の青蓮寺ダム,名張川の高山ダムにより,上野盆地はもちろん,下流大阪への用水供給・水害防止に役立っている。特に,青蓮寺ダムの水を上野盆地西部の丘陵地帯へ引き,山林の開墾によって造成する810haの畑地に灌漑を行うとともに,既存の水田592haの土地改良を行う国営青蓮寺総合開拓パイロット事業がある。上流には,香落渓・赤目滝・月ケ瀬などの観光地のほか,夢弦(むげん)峡・大滝峡・岩倉峡などの景勝地が多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7126435