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近畿地方
【きんきちほう】


畿内とその周辺地域をさす呼称。大化改新の詔で「東は名墾(なはり)の横河(よかわ)より以来,南は紀伊の兄(せ)山以来,西は赤石の櫛淵より以来,北は近江の狭々波(ささなみ)合坂(おうさか)山より以来」を畿内とした(日本書紀大化2年詔)とあり,これを近世の地名にあてはめると東は伊賀国名張の長田川,南は紀伊国伊都(いと)郡,西は播磨国明石郡,北は近江国滋賀郡から内側の地域で,のちの畿内5か国よりやや広い。その後,国郡の制が定まるにつれて畿内は大倭(やまと)・河内(かわち)・難波(なにわ)・山背(やましろ)と河内から分かれた和泉(いずみ)となり畿内5か国あるを以て五畿内と称せられた。平安遷都後,山背を山城,難波を摂津,大倭を大和とした。「延喜式」に「畿内山城国上大和国大河内国大和泉国下摂津国上」と格付けされた。いずれにせよ畿内は大和朝廷の本拠地であり,古代日本の中核地であった。五畿七道の制が定められ,畿内より遠近によって近国・中国・遠国と区分されたが,近国は東は東海道の遠江まで,西は山陽道の播磨までで畿内に準じる地域と考えられた。近畿地方の呼称は明治になって定められた地理区分であるが,畿内と近国の大部分を含んでいる。すなわち五畿内と伊賀・伊勢・志摩・紀伊・淡路・丹波・丹後・播磨・但馬・近江の15か国にわたり,府県制では京都府・大阪府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県・三重県の2府5県の範囲である。面積約3万3,000km(^2)・人口2,121万人(昭和55年国勢調査)はわが国の面積の約8.6%,人口の約18%に当たる。地形的にはこれを北部山地・中央低地・南部山地に分ける。北部山地は中国山地の延長で600~1,000m級の山地で,さらにこれを播但山地・丹後山地・丹波山地等に分ける。播但山地は1,000m級の山頂をもつ山地で,日本海側と瀬戸内海側の分水界となっている。丹波山地の東縁は比良断層崖で限られ,東高西低の傾動地塊は比良山地と呼ばれる。南縁も断層線で区切られ大阪平野に臨む。山地は地盤運動が盛んで内陸盆地が多く,由良川流域の福知山盆地,大堰川流域の亀岡盆地,加古川流域の篠山(ささやま)盆地などが大きい。亀岡盆地の水は保津峡の景勝をつくって京都盆地に入る。河川は日本海に入るものに円山川・由良川があり,大阪湾・瀬戸内海に入るものに大堰川・賀茂川・武庫川・加古川・市川などがある。中央低地は単純な平野でなく,多くの地塁山地と地溝盆地や海岸平野が交互に並ぶ複雑な地形をしている。山地は東から伊吹山地(伊吹山1,377m)・鈴鹿山脈(雨乞岳1,288m)・布引山地(笠取山845m)・笠置山地(神野山619m)・生駒山地(生駒山642m)・金剛山地(金剛山1,112m)などがいずれも南北に並び,和泉山脈(葛城山866m)は東西に走っている。さらに兵庫県南東部に六甲山地(六甲山932m)があって,東北東から西南西に延びる。大阪湾と瀬戸内海との境にある淡路島は瀬戸内海第一の大島(595km(^2))であるが,その北部の津名丘陵(516m)のまわりの断層線は六甲山地に続く。南部の諭鶴羽(ゆづるは)山地(608m)はほぼ東西に走って,東は和泉山脈,西は讃岐山地に続く。平野・盆地は東から伊勢平野・近江盆地・上野盆地・京都盆地・奈良盆地・大阪平野・姫路平野がある。この中で伊勢平野のほかは大阪湾・瀬戸内海斜面である。近江盆地・京都盆地・奈良盆地・上野盆地と大阪平野の水は,おおむね集められて淀川となって大阪湾に注ぐために,淀川は本流の流長75kmであるが流域面積8,240km(^2)というわが国屈指の大河となる。姫路平野は北部山地から南流する揖保(いぼ)川・市川・加古川などに涵養されている。琶琵湖はわが国最大の湖(面積674km(^2))である。盆地の水を集めて瀬田川・宇治川・淀川となって大阪湾に注ぐ。東岸には姉川・犬上川・愛知(えち)川・野洲(やす)川などが注ぎ,大きな三角州をつくり湖岸平野となる。西岸は安曇(あど)川があるのみで比良断層崖が迫っている。野洲川の三角州は特に大きく湖を南北に分けている。南部山地は紀伊山地で,中央構造線以南の地域である。最高峰八剣山(1,915m)が北寄りにあって,これより周辺に向かって低下するが,大きくは南北に走る台高山脈・大峰山脈・伯母子山地に分かれる。河川はこれらの山地に発して東流するもの,西流するものが多いが,南流する熊野川(183km)が近畿第一の長流である。海岸は日本海側は宮津湾・舞鶴湾の湾入であるほかは単調で,宮津湾に天の橋立の景勝がある。伊勢湾・大阪湾は単調で,須磨・明石や伊勢湾岸は白砂青松の海岸。南部の太平洋岸は隆起・沈降等の地盤運動の影響を受けて海岸線も単調でなく,特に志摩半島は隆起海食台が沈降した複雑な海岸を呈している。気候についてみると,京都府・兵庫県の日本海側は北陸地方に続く日本海岸気候地域で,冬の季節風に伴う降水量が多く,かなりの積雪をみる。年降水量は2,000~2,500mm。年平均気温は14~15℃で太平洋沿岸部に比べやや低い。瀬戸内海に臨む大阪府と兵庫県南部は,1年を通じて晴れた日が多く,降水量の少ない瀬戸内海気候の特色をもっている。年平均気温は大阪15.6℃・神戸15.5℃,1月平均気温大阪4.5℃・神戸4.5℃,8月平均気温大阪28℃・神戸27.3℃で,当地方で最も高温な地域である。大阪は沖縄を除いて全国第一の高温地である。これは夏の雲量が少なく日射量が多いことと都市気候の影響が重なっているためである。大阪湾斜面でも海に面していない京都盆地・奈良盆地・上野盆地は盆地気候の特色をもち寒暑の差が臨海部に比し大きい。紀伊半島の南部海岸地方は典型的な南海型気候を表す。半島の海岸を取り巻くように年平均気温16℃の等温線が通る。潮岬は年平均気温16.8℃,1月平均気温7.5℃という本州最暖地である。真夏日(日最高気温30℃以上の日)の出現日数は京都69日,大阪68日であるのに対して潮岬は21日で,夏の酷暑は中央低地に訪れる。紀伊山地の南東斜面は3,500~5,000mmの年降水量があり,大台ケ原山5,186mm,尾鷲(おわせ)4,164mm,新宮3,525mmである。伊勢平野を主とする伊勢湾沿岸地域は東海地方の平野に類似した温和な東海型気候である(津年平均気温14.8℃,年降水量1,714mm)。これらの海岸部に比し内陸の山地はいずれも低温で,年平均気温をみると伊吹山(1,376m)6.1℃,比叡山(832m)9.8℃,大台ケ原山(1,695m)6.5℃,荒神岳(1,250m)9.8℃である。当地方の歴史は日本の歴史であるといっても過言ではないほど,日本の歴史は長期にわたって当地方を中心に展開した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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