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熊野川
【くまのがわ】


新宮(しんぐう)川ともいう。三重・和歌山・奈良の3県にまたがり,和歌山県境を南流して新宮市で熊野灘に注ぐ。1級河川。流長約157kmで近畿地方第一の長流,流域面積約2,440km(^2)。上流は大峰山に源を発する十津川を本流とし,大台ケ原山麓に発する北山川と宮井で合流し,当川になる。北山川の峡谷が瀞峡で,下瀞・上瀞・奥瀞からなり,当川の河口から宮井を経て十津川筋の本宮町まで9里8町(約36.8km)を九里峡という。当川流域一帯は吉野熊野国立公園の一部で,十津川・北山川流域はスギ・ヒノキで覆われている。「新宮市史」によると,古来紀の国は木の国で,熊野は温暖・多雨のため森林が茂り,この材木が筏によって新宮に集められ需要地に運ばれた。森林伐採統制は古代からあったが,江戸期,徳川頼宣が新宮城主水野重仲に奥熊野の支配をさせた頃から厳しく統制した。筏流しは江戸初期からあり,「新宮市史」によると寛文年間に筏問屋もつくられ明治になると筏夫は台湾・満州に進出,特に十津川・北山川の筏夫は第2次大戦まで,朝鮮の鴨緑江まで出かけその技術を教えた。熊野川には明治36年浅里・南檜杖・鮒田に網場(あぱ)がつくられ,台風の時材木が海に流されるのを防いだ。ワイヤを使って流れの緩い淵に材木を集めるのである。しかし奥地にダムができたり,トラック輸送が多くなり昭和39年に閉鎖された。現在は上流の十津川水系に猿谷・風屋・二津ダム,北山川水系に池原・七色・小森ダムがある。また,同河川は平安末期以来,上皇・公家・武士などが熊野詣でに利用していた。現在河口付近の紀宝町鮒田からウォータージェットにより,十津川は折立まで,北山川は上瀞まで,新宮から多くの観光客を運んでいる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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