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瀞峡
【どろきょう】


熊野川の支流北山川の峡谷の総称。奈良・和歌山・三重の3県にまたがり,一帯は吉野熊野国立公園に属す。下瀞・上瀞・奥瀞からなり蛇行流路をなしている。この峡谷は,太古大瀑布があって浸食作用によって後退した滝壺の遺跡であるといわれる。下瀞は延長8丁(873m)あるため瀞八丁と呼ばれているが,実際は約1,100mある。北山川右岸の下地から田戸までの約1.2kmが,最も景観の優れる所で国の特別名勝・天然記念物に指定されている。川幅50~80m,水深約16m,断崖の高さは水面から20~50m,柱状節理をなし,風化した奇岩・怪石の上に鬱蒼とした樹林が茂る。水は碧潭で,静かな流れは流水であることがわからないほどで,瀞の名もここからつけられたと思われる。峡谷の入口洞天門を過ぎると左右に夫婦岩・亀岩・巨岩が滑り落ち岩壁に寄りかかって石門をつくっている滑り石がみえ,そのあたりは静水紺碧の深淵をなし,神秘的である。その対岸には幅87m・高さ20m余の屏風岩がそそり立ち,烏帽子岩・鶏冠岩などを過ぎると,左に割れ目に沿ってできた竜潜窟が見える。その上方に仙遊窟があり,この辺りの淵が峡谷中最も深く(水深約21m),寒玉潭と呼ばれている。その上流には六枚屏風・虎島があり,葛川が注ぐ合流点をすぎ,釣り橋をくぐると上瀞の入口である田戸に着く。上瀞は田戸の上流で,紀和町和田付近までの約2km,崖も低くなり水深も浅いが水は清く澄んでいる。途中布引き滝,巨大な岩柱5本が屹立する橋杭岩があり,後洞門からウォータージェットがくる。奥瀞は上瀞の上流で和田から和歌山県東牟婁(ひがしむろ)郡北山村七色辺りまでの約28km,滝と瀬の多い渓谷は,小森・七色両ダムの建設でその3分の2が湖底に沈んだ。現在は沿岸のツツジ・サツキ・シャクナゲの咲く春と,紅葉の秋には特に多くの観光客でにぎわう。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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