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比良山
【ひらさん】


「比良山」という独立峰はないので,比良山系・比良山地などと呼ぶべき総称名である。古くは比羅山・平山とも書き,小松(こまつ)山ともいわれた。「ヒラ」とは険しい崖のある山を意味したアイヌ語といわれる(ジョン・バチェラー説)。準平原的な丹波山地の東端にあって,東は琵琶(びわ)湖岸,西と北は安曇(あど)川,南は和邇(わに)川で画された,南北約20km・東西約10km・周囲約70kmの地塁山地。その中に標高1,000m以上の高峰が15の峰座を存する。主峰は武奈ケ岳(1,214.4m)。高島郡朽木(くつき)村・安曇川町・高島町・滋賀郡志賀町・大津市葛川細川(かつらがわほそかわ)町・葛川貫井(ぬくい)町・葛川梅ノ木町・葛川町居町・葛川坊村町・葛川中村町・葛川木戸口町・葛川坂下町・伊香立途中(いかだちとちゆう)町・伊香立上竜華(かみりゆうげ)町・伊香立下竜華町の1市13町1村の町・大字に広がる。昭和25年7月に指定された国定公園琵琶湖の一部を構成。「万葉集」巻9に「ささ波の比良山風の海吹けば釣する海人(あま)の袖かへる見ゆ」と詠まれており,その雪景は「比良の暮雪」と称し,近江八景の1つに数えられている。「輿地志略」に「比叡山の北にある大山地。直立八町山上に樹なし,篠茂りて猛獣栖むという。山上に池あり長十四間広五六間許,本州七高山の其一なる事は拾芥抄に見えたり。名所方角抄に,比良山は京より北国への路也十二里也あり,京より丑の方に高く見ゆる山也。麓の湖の辺に白鬚明神座す。比良の北に小松という名所ありという。或人いう五月の晴天此山上に登りて遙に望めば駿河国富士山を見るという,未其是非を試みず。ここの暮雪,近江八景の其一,詩歌あり。悉く琵琶湖の条下にいだす考見すべし」とあり,昔は,比良山地南主稜全体または滋賀郡志賀町・大津市葛川木戸口町・葛川坂下町の境にある蓬莱(ほうらい)山(1,174.3m)をさしたようである。




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「角川日本地名大辞典」
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