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秋の山
【あきのやま】


京都市伏見区,鳥羽離宮内にあったとされる築山。著名な築山で,「雍州府志」「山州名跡志」「扶桑京華志」「都名所図会」など多くの地誌書に見える。「雍州府志」には「東庭築山種花樹愛春光,西庭種楓樹賞秋色,南方避暑北方見雲,各有其趣,今悉為田疇秋山纔残其麓有寺」とある。また「山州名跡志」には「古ヘ此山ニ阿弥陀堂アリ。同キ殿中ノ御堂也。其本尊春日ノ作。坐像一尺五,六寸アリ。今此所ノ東,中嶋村ノ中常念寺ノ本尊是ナリ。件義ヲ以テ此山常念寺ノ有ナリ」とある。鳥羽離宮は白河・鳥羽両上皇2代にわたって造営された広大なものであった。この地は鴨川などの流路固定がなされるまで,湿地であったため,池泉とその中の築山・中島によって水閣の趣をたたえていたと思われる。「続後拾遺集」に前大納言俊光の「衣打つ鳥羽田の里のいなむしろ 衣寒になりぬ秋の山かぜ」,藤原俊成の「長秋詠藻」に「人とはばいかに語らむ秋の山 松の嵐に有あけの月」など多く詠まれている。また「飛羽山」ともいい,歌枕ともなっている。秋の山の北東に菊水という井戸があり,「山州名跡志」に「古ヘ仮山泉水ノ所称菊水名水アリシ,其所今ノ秋山ノ北東半町許ニアリ,今無水シ」と見える。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7136090