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有王山
【ありおうやま】


高間山(増鏡)ともいう。綴喜(つづき)郡井手町東部にある山。玉川の上流,田村新田の南に位置する。標高377m。当山山麓一帯は橘氏の故地といい,奈良期から開かれた。「山城名勝志」には「在井手村東,今云有王谷,按橘諸兄公有井手山庄,今有王山其曽孫有王朝臣宅跡乎」とある。さらに,山麓の谷について「山州名跡志」の有王芝の項に,「在井堤山南谷入寅卯一里余,其地右ノ山腹。方四町許ノ芝生ノ地ナリ。同所ニ宮谷ヤウジノ尾等ノ名アリ。有王ノ名義不詳。先人所作名所記此辺載有王山」と記されるほか,「拾遺都名所図会」は有王芝を有王谷ともいう。山麓には,百塚,俊寛僧都の屋敷跡(雍州府志),有王朝臣の別業があった。百塚は「其の一は右大臣橘氏公の為,其の一は正四位下橘有王朝臣の為。今両墓の趾なし」(山城志)という。また,当地は,元弘の乱に後醍醐天皇が笠置山から和束谷を経て逃げ延びる途中,この地で捕らえられた(太平記)とされ,南朝哀史の里としても知られる。大正期,有王山北方の玉川源流付近に灌漑用の大正池が築かれたが,昭和28年の南山城水害以後,コンクリート堤に造りかえられ,近年行楽シーズンには有王山とともに,玉川の渓谷に沿ったハイキングコースとして訪れる人々が増加している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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