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菊谷川
【きくたにがわ】


菊渓川・菊水川(府地誌)・菊水渠・菊澗(坊目誌)ともいう。東山区北部を流れる川。山科(やましな)区との境,東山三十六峰に属す東大谷山(粟田口東大谷山町)と高台寺山(粟田口高台寺山町)の間にある菊渓(菊カ谷)に発して西流し,下河原町付近で公共下水道となって,さらに西方へ流れ,建仁寺を経て鴨川に架かる団栗橋下で琵琶湖疏水に注ぐ。「坊目誌」は「下河原高台寺山の涓滴菊潭水より発し,遂に細流を為す,……鷲尾町,上弁天町,毘沙門町を経て,小松町建仁寺境内に入る。幅員約五尺,此延長二百四十間,水極めて清涼なるも下流に至り人家の棄水を放流するを以て,汚濁を免れず,曽て相国寺僧横川〈足利義政愛僧〉来り菊渓川を賦する詩あり」と記す。現在,ほとんど暗渠となり表流部は約0.8km。源流付近は墓地となっており,人家の間を細流となって下河原町へ流れる。同町は菊谷川の扇状地で,かつて氾濫も多く「相伝フ菊渓川の曠々たる磧地」(坊目誌)という状態であった。また,かつては清流であり,川名は,野菊が生育していたために菊渓と呼ばれた源流部の渓間に発することによると考えられる。下河原町の民家内には「茶湯評林」に見える名水「菊水の井」があって,「山州名跡志」は「伝云フ古仮山泉水ノ所称菊水名水アリシ,其所今ノ秋山ノ北東半町許ニアリ今無水」と記し,さらに「下河原人家ノ間,路傍東ニアリ,此所往昔河原ナリ,此渓源菊渓ト云フ,其下流ノ地ナル故,コノ名ヲナス者カ」と見える。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7139044