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喜撰山
【きせんやま】


仙郷山・喜撰岳ともいう。宇治市東南部,宇治川北岸に位置する山。標高416m。北麓を宇治川電気水路が通り,西方に明星山がある。西側山腹にかつて喜撰法師が隠棲したと伝える洞窟がある。六歌仙の1人といわれる喜撰法師は「我が庵は都の巽しかぞすむ,世をうぢ山と人はいふなり」と詠じており,「元亨釈書」も喜撰について「宇治山に居りて密咒を持し云々」と記していることから宇治山とも称したことがわかる。「山城志」も喜撰山を古くは宇治山と称したとするが,おそらく宇治山はさらに広い範囲の総称であろう。喜撰山は宇治市南東部の最高峰であるから,これが宇治山の最高峰であったことにもなる。「山州名跡志」は「絶頂八畳敷ばかり……遠境目前にあり」とその眺望のよいことを記している。この山は古くから池尾村と宇治郷の共有山とされていた。喜撰山はほぼ古生層からなるが,山頂北側を喜撰山断層が東西方向に,東側を笠取断層が南北方向に走り,その交点付近には谷川の深い谷が刻まれていた。昭和45年にこの喜撰山東側の谷をせきとめた喜撰山揚水ダムが完成した。ダムは高さ96m・頂長267mのロックフィル式。夜間の余剰電力で宇治川の天ケ瀬ダムから揚水し,昼間に発電する揚水発電のための喜撰山揚水発電所は,最大出力46万6,000kwにのぼる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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