雲母坂
【きららざか】

勅使坂・不動坂ともいう。京都市左京区修学院地区から比叡山への登路にあたる坂。林丘寺の東から音羽川の谷に沿い，四明岳を経て延暦寺に至る。険しい山路であるが，比叡山に至る最短路として盛んに利用された。坂名の由来は，当地の土砂に雲母を含有するからとの説がある一方，「此坂向王城，諸山ノ中第一ノ高山ニテ旦夕雲覆ヘリ。京師ヨリ是レヲ見レバ，此坂雲ヲ生スルニ似タリ。仍テ云雲母坂也」（山州名跡志）とする説が一般的である。また，勅使坂の名は，延暦寺への勅使参向に用いられたことに由来し，不動坂は延暦寺への途次に無動寺があり，不動尊を祀ることによる（山城名勝志）という。また叡山の僧兵が神輿をかついで朝廷への強訴の際にも雲母坂を下ったという。当坂の登り口には水飲峠があり，「雲母寺ノ東ニ在リ，路傍ノ岩間ニ水アリ。叡嶽ニ登ル者之ヲ掬ス」とある。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7139477