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黒地湾
【くろちわん】


舞鶴市の北端,成生(なりう)にある湾。東側に毛島,背後に黒地岳(213.3m)がある。湾内には集落も上陸地もなかったが,海岸まで水深が深いので,避難港・風待ち港として利用され,天保年間には幕府の巡見使も寄港している。湾名は港と背後の山地の一部を所有した田井の倉内家に由来し,倉内湊ともいわれた。黒地の地名の由来は,当地の岩石が黒色で,避難の際の目印として遠方から判別できたためという。「丹哥府志」には「成生村倉内 成生村の北に湾あり倉内という,湾の広さ十六,七町歩,懸崖左右に聳える,前に島あり,所謂毛島なり,風波の侵さざる処なり,航海の者此処に入りて風波を凌ぐ」と記されている。かつて湾を包む山林の一部は田辺藩の御用林で,藩政期以来当湾付近と山林は成生・田井両地区の入会地。また,天正年間から鰤刺網の漁場になり,明治38年に鰤大敷網が導入され,明治末期には4統に増えている。若狭湾域の代表的な好漁場であったため,出稼漁夫も多く,その宿舎・倉庫・桟橋などが湾岸に設けられた。大正3年に地元の漁協が網の経営を行うようになると,これらの建物も不要になり,撤去された。現在も明治期以来の大型の定置網が湾口部の風島(葛島)・奈島に設置され,湾内は多くの小定置網の漁場として利用されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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