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木幡山
【こわたやま】


京都市伏見区の桃山丘陵南部,または高峰山・平尾山・御蔵山・地蔵山など宇治川東岸の山々の総称。時代によって木幡山と呼ばれる範囲が変化している。「万葉集」には柿本人麻呂の「山科の強田山を馬はあれど 歩ゆ吾が来し 汝を思ひかね」との歌があるが,この強田山(こわたのやま)は当時の近江と大和を結ぶ幹線交通路沿いと考えられ,現在の宇治市木幡付近である可能性が強い。しかし,山城国山科郷古図では,桃山丘陵の南西端にあたる付近に「木幡山」の地名が記されており,宇治市六地蔵にある地蔵堂が「百錬抄」にでてくる木幡堂であると考えられることなども考え合わせると,木幡はかつて山科盆地南部一帯の広い範囲の名称であり,木幡山もまたその東西の山の総称であったと考えられる。それが次第に桃山丘陵の南部の名称として限定して使用されるようになり,宇治市木幡の東側の山々には別の名称がつけられるようになったものと思われる。「源平盛衰記」には「櫃川を打渡り,木幡山深草里より入るもあり」と木幡山を桃山丘陵地域の名称としている。近世には,「山城名勝志」が「今の伏見城山は木幡山也」とし,「扶桑京華志」も同様の説であるが,「雍州府志」は「木幡山,高峰之北に在り,或いは関山と称す」として,宇治市木幡東側の山の古称としている。現在は木幡山の名称は使用されていない。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7140085