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大文字山
【だいもんじやま】


京都市左京区の南東,東山三十六峰の中心部に位置する山。標高466m。本来は一帯の山塊全体が如意ケ岳と呼ばれていたが,大文字の送り火が盛んに行われるようになってから,当山が独立して大文字山と呼称されるようになった。現在では,東部の山塊中最高点を如意ケ岳の名で呼ぶ。山頂から西麓にかけて,歴史的風土特別保存地域に指定されている。地質は古生層が花崗岩の貫入を受けた際に,接触変成されたホルンフェルスからなり,東方の如意ケ岳へと一連の高まりを示し,地質学研究には絶好のフィールドである。毎年8月16日夜に行われる大文字の送り火は,現在では観光行事ともなっているが,本来は盂蘭盆会の行事の1つで,先祖の霊を冥土へ送る精霊の送り火である。その起源については諸説があり,いずれも伝説の域を出ないが大別すると2つに分かれる。1つは弘法大師が疫病退散のため山腹に人体をあらわす「大」の字を書き,護摩の火を焚いたことに由来するという説(雍州府志・日次記事)と,将軍足利義政が鈎(まがり)の陣で亡くなった実子義尚の冥福を祈って焚かせたことに由来するというもので,この場合「大」の字は相国寺の僧横川景三の筆跡と伝えられる(明霞遺稿・山州名跡志)。いずれにしても盂蘭盆会の行事として盛んに行われるようになったのは天文期~永禄期であり,現在大文字とともに五山の送り火として点じられる妙法(西山・東山)・船形(西賀茂明見山)・左大文字(大北山)・鳥居(水尾山)も江戸期には出揃った。さらに,さまざまな俗信と結びつき火床に残った消し炭を厄病除け・盗難除けとして持ち帰るという風習を生んだ。送り火は,江戸期以来山麓の旧浄土寺村の人々によって維持され,現在も銀閣寺町・銀閣寺前町・浄土寺東田町・浄土寺南田町・浄土寺石橋町などの人々が保存会を結成して活動をしている。山頂から京都市街の全貌が見わたせる絶好の地で,四季を通じハイカー・観光客が多い。登山口は,銀閣寺正門前を左に弘法大師堂へ向かうコースなどがある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7141988