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丹波山地
【たんばさんち】


丹波高原・丹波高地とも呼ぶ。中国山地の東端に位置し,京都府の中部から兵庫県西部にまたがり高原状をなす。一部は,大阪府北部,滋賀県西部,福井県西部にもまたがる。北は福知山盆地・上林川を隔てて舞福山地と,南は京都盆地,東は安曇川・高野川に沿う花折断層で比良山地と境する。当山地は,隆起準平原地形をなすが,これは古生層の褶曲山地が浸食されて準平原化し,のちの隆起で浸食作用が復活して新たに多くの開析谷が刻まれたもの。各山頂や尾根の大部分は600m内外の定高性を示すが,この浸食基準面より高い900mを超す三国岳(959m)・皆子山(971m)・愛宕山(924m)などは浸食からとり残された残丘とみなされる。山地内には多くの小断層が縦横に走り,断層線に沿って由良川・大堰川とそれらの支流が樹枝状に深い谷を刻み,断層谷には亀岡・園部・須知などの盆地群が形成される。また丹波山地は,日本海に注ぐ由良川水系と大阪湾に注ぐ大堰川水系を分ける大分水界。高原状であり,分水界の移動や谷中分水界の出現のためはっきりした分水嶺をたどることは難しいが,日吉町胡麻の分水嶺の標高は208m。山地内は,大堰川下流の保津川峡谷と福知山盆地東端を結ぶ断層線によって,大きく二分される。この断層線より東部は若丹山地(東丹山地・北桑山地)と呼ばれ,600~800mの定高性を示すのに対し,摂丹山地(摂丹高原・西丹山地)と呼ばれる西部は400~500mの定高性を示す。丹波山地は古代から林業が盛んで,良質な木炭の供出,大堰川水運による用材の搬出,茶の湯の隆興による数寄屋建築の用材など,さまざまに利用され発展してきた。特に若丹山地を中心とする地方は,西の摂丹山地が低山性で比較的早くから開発が進んだのに対し,谷が深くて狭いため開発が遅れた。山地内の産業は林業が中心で,京都市街地に近い北山地区では中世以来の伝統をもつ集約的林業が現在も盛んに行われている。現在も人口密度が極めて低く北部には林道の開通をまつ原生林も広く存在している。一方,若丹山地より一段低くなる摂丹山地は断裂による地塊運動が顕著で,亀岡盆地・須知盆地などが形成される一方で,由良川や大堰川水系のつくる浸食谷も発達している。この地域は古代から山陰道が通じ,中央の文化も早くから吸収できた。水田も比較的よく発達し,良質の丹波米を京阪に送り出してきた。また,木炭生産・和牛飼育・シイタケ栽培・寒天製造・養蚕・鉱業(大谷のタングステン)など多彩な産業が発達し,丹波杜氏などとともに地域を特色づけてきた。近年は国道9号の整備を背景に,亀岡盆地では京都市近郊住宅地として宅地化が急速に進んでおり,北西部の山間地でも観光農園に活路を見出している。このように山地内の様相は,西側と東側では,非常に大きな変貌の違いを遂げつつ,多様な産業に加えて,回廊的位置にあることにより,その人文的特色を形成してきた。また当山地は,近畿文化圏と山陰文化圏の両者の影響を常に受けてきた地域でもある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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