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広沢池
【ひろさわのいけ】


京都市右京区中部,嵯峨広沢町にある池。南方を国鉄山陰本線・京福北野線が通じる。大沢池の東に位置し,周囲約1.3km。古くは,「九暦」承平6年11月6日条に見える。上古に嵯峨野が沼沢地であった名残といわれることもあるが,地形からみると疑問があり,明らかに溜池として作られたもの。嵯峨野を開拓した秦氏の支族「朝原忌寸」(続日本紀,宝亀7年12月25日条)などと関係があるかもしれない。宇多天皇の孫寛朝僧正が広沢池を造ったとする伝説もある(拾芥抄)。付近一帯の灌漑用水となっている。古来,観月の名所であり,広沢池の月を詠んだ歌は多い。永祚元年10月,広沢池の北西に,寛朝僧正が遍照寺を開き(小右記・百錬抄),東密事相を興隆し,いわゆる広沢流の基を築いた。遍照寺から池中西岸近くの観音島に橋を架けていたという。遍照寺は早く退転し,近世になって広沢池南方に再建されている。広沢池の南西隅に児社(ちごのやしろ)がある。これは寛朝僧正の死を追って,広沢池に投身した児を祀ったものである(嵯峨行程)。広沢池の周辺には古墳が多く,長刀坂(なぎなたざか)・嵯峨七ツ塚・広沢の各古墳群などがある。また広沢池の東方に千代の古道(ふるみち)と呼ばれる道があり,鳴滝・常盤に通じている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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