100辞書・辞典一括検索

JLogos

18

和泉山脈
【いずみさんみゃく】


大阪府南部と和歌山県北部の境界をなす山脈。東西約50kmで,山脈南麓を中央構造線が東西に走る。内帯に属するこの山脈は主として和泉砂岩からなる。和泉砂岩は俗に「和泉青石」といい,石碑・灯籠・庭石などに利用される。東は千早峠で大阪・奈良境の金剛山地に接し,西は紀淡海峡に没する。東から岩湧(いわわき)山(897.7m)・三国山(885.7m)・葛城(かつらぎ)山(858m)の80m級の山嶺,ついで西へ高城(たかしろ)山(569m)・天狗岳(612m),さらに西へ飯盛山(384.5m)などへと3段にわたって低くなっており,各段の境はそれぞれ中央構造線を横切る断層線である。葛城山周辺の山嶺を葛城山地と呼ぶ。なお,金剛山地の葛城山とまぎらわしいので,和泉葛城山と呼んで区別することもある。大阪府側は緩斜面であり,その前面に和泉丘陵が張り出す。和歌山県側は急斜面をみせて一大地形障害の印象が強い。この地形的障害を越える通路は,大阪府側からは前山を浸食する谷をさかのぼるため,必然的に水系に支配され,上流部は相互に結びつかぬほど深くなる。例えば千早峠へは石川・千早川の谷をさかのぼって達するが,現在の自動車道は金剛山頂へのケーブル駅までしか通じていない。国道310号は河内長野市から石見川をさかのぼり,金剛トンネルを抜けて奈良県五條市に達する。その西,紀見(きみ)峠へは河内長野市から天見川の谷沿いに通じる高野街道があり,古くからの峠道であった。国道170号は紀見トンネルで和歌山県側に抜ける。南海高野線もこの谷をさかのぼり,トンネルで和歌山県橋本市に達するが,やはり難所である。さらに西へは,石川谷上流の蔵王峠(500m),和泉市の父鬼川上流の七越峠(830m)・鍋谷峠(640m),岸和田市の津田川をさかのぼって葛城山頂を越える道,泉南市の金熊寺(きんゆうじ)川をさかのぼった風吹峠,阪南市の山中川を利用する雄山峠,岬町の大川谷からの孝子(きようし)峠などがある。雄山峠は国鉄阪和線・阪和自動車道が通じ,孝子峠には南海本線・国道26号が並行して通る。これら和泉山脈の山嶺線の尾根道は,古くは修験者の道に利用され,現在もなおその伝統を受け継いでいるが,一方では縦走ハイキング道としても利用されている。また,北斜面の各山間支谷の集落は,いまだに孤立的なままに残され,古い民俗を残しているところも少なくない。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7147547