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猪名川
【いながわ】


神崎(かんざき)川の支流。全長44.7km(うち8.9kmが大阪府と兵庫県の境界をなし,他は兵庫県に属す)。兵庫県猪名川町杉生(旧六瀬(むつのせ)村)に発して南流し,途中で柏原川・槻並川などを合わせて兵庫県川西市に至り,さらに池田市古江町の南で久安寺川(上流域では余野川となる)を迎え入れ,兵庫県伊丹市に入って森本で二分して流れるが,東側を流れるのが本流で,西側の流れは藻川(もがわ)と呼ばれる支流。本・支流は兵庫県尼崎市園田で再び合し,神崎あたりで神崎川(古名,三国川)と合流する。「かくのみに有けるものを為名川のおきをふかめてわがもへりける」(万葉集)とあるように,古くは為名川・伊奈川あるいは蜷(にな)川ともいわれた。また,多田川・池田川の別称もある。流域一帯は古くは為那野(いなの)と呼ばれ,豊能・河辺(かわなべ)2郡にまたがっていた。上流域の多田盆地(川西市)は摂津源氏発生の地。中流域東岸の池田市は上流諸谷筋の谷口に当たり,古くからこの地域の交易・政治支配の拠点として発展してきた。また,猪名川の豊富な地下水を利用しての酒造業が発達し,久安寺川・余野川筋の諸村から集荷された炭は池田炭として諸方に売りさばかれた。唐から呉織(くれはとり)・穴織(あやはとり)の2織工女が着岸したという唐船淵(とうせんがぶち)の地名が池田市内に残っているように,猪名川筋の舟運はすでに古代からあったと考えられるが,江戸期における物資流通の活発化は猪名川筋の舟運の発達を促し,酒・炭・薪・綿・菜種・青物類などが下げ荷として,唐物・肥料類・衣料類が上げ荷として運搬された。池田市街に面する猪名川左岸の河川敷は猪名川運動公園となり,箕面(みのお)川との合流点の南側の左岸一帯は,関西の空の玄関口,大阪国際空港となっている。現在の本流は豊中市今在家の南から兵庫県尼崎市域に入るが,旧猪名川は豊中市と尼崎市の市境に沿って南下し,尼崎市戸ノ内町4丁目辺りで神崎川に合流していた。現在も旧水路は残されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7147653