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亀ノ瀬峡谷
【かめのせきょうこく】


柏原(かしわら)市と奈良県北葛城郡王寺町との境界にある峡谷。古くから景勝地として,また交通の難所として知られ,さらに地滑り地域としても名高い。大和川がV字型の先行河川となって生駒山地と金剛山地との間を横断して奈良盆地から大阪平野に流出する部分に当たる。柏原市高井田の国豊橋から,上流の王寺町元町1丁目付近までの約8kmの流路をいい,同市国分市場付近で著しく曲流している。両地点の比高は約13m,川底の最狭部は20m余で,途中に瀬や淵などが発達する。地名は亀の形をした岩が露出することに由来する。国鉄関西本線河内堅上駅の東北に当たる亀瀬橋の上手の川中に亀瀬岩と呼ばれる岩がある。古代の竜田道についてはいくつかの説があるが,亀ノ瀬越えと呼ばれる北岸山腹の峠を通る道が多く利用されたといわれる。江戸期の大坂からの剣先船の舟運も,峠村から上流の藤井村までは陸路の山越えで中継された。関西鉄道(現関西本線)の亀ノ瀬トンネルが難工事の末に竣工し,明治25年に同鉄道が全通してから,その障害は克服された。このため南岸の亀ノ瀬越え奈良街道は一時衰えたが,国道25号となり,自動車交通の発達に伴い,大阪と奈良とを結ぶ最も重要な道路となった。昭和6~7年に北岸に大規模な地滑りが発生して約3.3km(^2)の土地が川底へ移動し,南岸での隆起は最大35mにも達したという。関西本線は南岸に移設され,峠の集落移転や国道の改修が行われた。第2次大戦後も隣接地で数次にわたる地滑りが発生,排土工事が実施された。地滑りの原因は,基盤の花崗片麻岩の上に凝灰岩があり,さらにその上に安山岩が乗るといった特異な地質構造による。付近の斜面は河内ブドウの栽培地で,南岸には採石場があり,宅地化もみられる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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