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暗峠
【くらがりとうげ】


椋ケ嶺峠ともいい,闇峠とも書く(河内名所図会)。東大阪市と奈良県生駒(いこま)市との境界にある峠。標高452m。生駒山の南約2kmの鞍部に位置する。河内と大和とを直線的に結ぶ急坂の少ない暗越え奈良街道の道筋。古代から生駒越えのうちで重きをなしてきた峠である。草香の直越えに当てる説もある。平城遷都後には竜田道とともに難波への最短距離の道筋として利用されたといわれ,江戸期には大和郡山藩の本陣や旅籠が置かれ,参勤交代や庶民の伊勢詣でにぎわった。また,松尾芭蕉の最後の旅路となった所で,元禄7年9月菊の節句に当峠を通って大坂に向かった時の句に「菊の香にくらがり登る節句かな」がある。当時のにぎわいは,「河内名所図会」に「大坂より大和及び伊勢参宮道なり。峠村に茶店,旅舎多し」とある。また,同書の挿絵には掛茶屋・宿屋・高札場と人の往来の盛んな様子が描かれている。地名の由来についても同書に「生駒の山脈続て,小椋山という,椋ケ根の名あり。此山松杉,大いに繁茂し,暗かりなればかく名付る」とある。明治中期以後,関西鉄道(現国鉄関西本線)の湊町~奈良間や大阪電気軌道(現近鉄奈良線)の上本町~奈良間などが開通すると,峠は急速にさびれた。現在国道308号が通っているが,道が狭く大型車の通行はできない。今も峠の道筋に当時の石畳が残っており,府県境の標識を挾んで府内に9戸と奈良側に17戸の民家がある。南西に府民の森,なるかわ園地があり,ハイキングコースに利用されることが多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7149463