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太多田川
【おたたがわ】


「おおたた」とも読む。近世には小多田(おたた)川・小多々渓と書いた。西宮市の北部,六甲山地の東北部と名塩山地の間を東流する武庫川の支流。2級河川部分の流長は2,186m。有馬高槻構造帯と呼ばれる大破砕帯の中を,一直線に東流し深く浸食する。山口町船坂の集落で低い谷中分水界(400m)によって船坂川流域に接する。東流して南方より柏木谷・座頭谷・不動谷などの渓流を合わせ武庫川に合流する。北側の名塩山地は岩体が硬く支流はほとんど見られない。旧有馬街道は谷底の川瀬に沿う交通の難所であった。蓮如・羅山・元政上人・本居大平らの紀行文が残り,古代から有馬に行く道筋に当たる。現在の有馬街道は北岸の硬い地盤を選んでいる。南岸は破砕帯の花崗岩が浸食され,浸食に耐えた岩峰・岩塊が奇勝をつくり,大剣・小剣のある蓬莱峡,座頭谷,不動谷,赤子谷の景勝地が続く。荒地が多く山津波・土石流・洪水などの多発地となり,六甲山地の荒廃も甚だしかった。明治25年の大水害を契機に水源涵養・改修・砂防堰堤など総合的な治山・治水の先駆をなす歴史を持つ地域となり,昭和13年国営の六甲砂防工事事務所が設立されるまで,県営良元砂防工営所により地味な仕事が続き,当初の禿赭崩壊地の面影はなくなり,山林の育成,流路の整理,砂防堰堤の築造が進んだ。昭和13年,大風水害に無傷であった実績が,国営による六甲山地砂防工事へ進展することとなった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7156724