100辞書・辞典一括検索

JLogos

30

中国山地
【ちゅうごくさんち】


京都府から山口県に至る中国地方の脊梁をなす山地。最高峰は,大山火山(1,711m)を除くと氷ノ山(須賀山)の1,510mにすぎない。中国山地の名は,昭和9年に下村彦一・花井重次が「地形区」の中で名付けたものである。下って渡辺光は中国山地を江川によって,西を冠山山地,東を東部中国山地に細分し,兵庫県下では,加古川―由良川の谷を挟んで西を山陰山地,東を丹波山地に分けた。田中真吾は,この山陰山地を播但山地と新たに名付け,さらに播但山地を,中央部の中央山地,八鹿(ようか)を流れる八木川以北の山地を北但山地,山崎断層以南の山地を西播山地とした。中央山地は標高1,000mほどで,太平洋側と日本海側の分水嶺をなし,流紋岩地域が広く分布し,山頂には三室山(1,358m)に代表される800~1,000mの浸食小起伏面が残っている。北但山地は,扇ノ山(1,310m)や鉢伏山(1,221m)に代表される鉢伏火山岩類が流出してできた溶岩台地が広く分布し,山頂には平坦面が残る。なお神鍋山(469m)は1万年前の溶岩円頂丘である。そのほかの蘇武岳(1,074m)などには第三紀層が分布する。西播山地は,書写山(368.2m)に代表される標高300~500mの浸食小起伏面が発達する。丹波山地も三岳(793m)など標高500~800m級の山々が続き,北半が古生界,南半は流紋岩類が分布している。これらの山地の間を日本海側に岸田川・矢田川・竹野川・円山川,瀬戸内側に千種川・揖保川・市川・加古川・武庫川などが流れ,山間には,篠山盆地・氷上盆地・豊岡盆地が発達している。盆地には,氷上町石生(標高95m)にみられる加古川と由良川の河川争奪の跡や篠山(ささやま)市の篠山川と武庫川の河川争奪の跡がいくつか残り,最近まで泥炭の堆積する排水不良地であった。このように中国山地を特色づけるものは,山頂付近にみられる浸食小起伏面の存在である。小起伏面は,脊梁山地面(800~1,000m)と吉備高原面(400~600m)に分かれ,鮮新世の地盤の安定期に陸上の削剥を受けて準平原化が行われた名残と考えられている。これらの小起伏面が今日のような高度差になったのは,第四紀に入って地殻変動が激しくなり,太平洋プレートとアジアプレートがぶつかるという東西圧縮によって生じたと考えられている。中央山地と西播山地を境する山崎断層も山地を形成する構造運動の現れで,昭和59年5月30日にはマグニチュード5.6の地震が発生している。中国山地は,年降水量が2,000mm,平均気温が13~14℃と瀬戸内海沿岸部よりも500mm多く,2~3℃低く,冬は雪が多い。中央山地のなだらかな高原では丹波牛や牛乳の生産が行われ,冬は神鍋山,戸倉,鉢伏,氷ノ山などはスキー場としてにぎわう。また一帯は氷ノ山後山那岐山国定公園であり,四季を通じて観光客が訪れる。県立自然公園も多く,雪彦峰山・朝来群山・笠形千ケ峰・音水深林の各県立自然公園がある。丹波山地では多紀連山・猪名川渓谷・清水東条湖などの県立自然公園がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7160699