赤井谷横穴
【あかいだによこあな】

奈良市歌姫町に所在する６世紀後半の横穴墓。佐紀丘陵から山城盆地に向かって派生する一尾根の南斜面に墓室をうがっている。昭和29年県教育委員会によって調査され，横穴の規模は全長5.5m，奥壁幅1.88m，高さ1.85m。平面及び断面は酒瓶を縦に半截した形態で，玄室床面にはほかの古墳にあったと推定される埴輪片を敷き並べる。玄室には２基の亀甲形陶棺が納められていたが，１基は本来蓋を伴わなかったらしい。蓋を伴った棺内から金環一対が出土し，棺周辺からも須恵器（高杯・・壺・甕），土師器（高杯・壺），金環・鹿角製柄刀子などが出土した。横穴および陶棺は市北西部で集中して発見されることから，被葬者としてこの地を勢力基盤としていた土師氏（秋篠氏・菅原氏）をあてる説もある。参考文献に，「奈良市歌姫町横穴」（奈良県史蹟名勝天然記念物調査抄報12）がある。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7165121