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男坂
【おさか】


小峠ともいう。宇陀郡大宇陀町半坂にある峠。竜門山地西北部,松山街道に位置し,標高433m。古くから宇陀地方と奈良盆地南部を結ぶ主要道路であった。「小峠の茶屋」は有名。しかし明治期に女寄(めより)峠(338m)経由の現在の国道166号ができて,廃れてしまった。付近の地質は花崗岩。神武即位前紀戊午年9月戊辰条の「女坂に女軍を置き,男坂に男軍を置く」とあるその伝承地は大宇陀町内に求められる。「大和志」が男坂の比定地を半坂村西方の小峠として以来,「大和志料」「書紀通証」「書紀通釈」などこの説を踏襲するものが多い。半坂が男坂(なんさか)の音に近いとする説,「和名抄」の浪坂(なんさか)郷に起源を持つとする説(大宇陀町史)などがあるが定説をみない。男坂・女坂が相並ぶ地形を並坂=浪坂と考える説もある(日本地理志料)。なお,桜井市の押坂(おつさか)を男坂と書くこともあるが,記紀の伝える神武天皇が兎田の下県から奈良盆地南部の磯城・磐余方面に進出したときの推定ルート上に,半坂=男坂と並んで位置することは興味深い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7165940