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春日山
【かすがやま】


奈良市中央部,市街地の東側にある山。東部の大和高原と市街地の広がる平坦地との境に位置する。標高498m。奈良盆地の東縁部は春日断層崖によって大和高原と区切られるが,その北部の部分にあたる。単独峰ではなく,香山(高山)・上水谷峰・御蓋山(三笠山)などから成る。東部の花山もかつて興福寺領で春日山の一角を構成していたが,近世に入ると幕府領となり,管理上からも一体性を欠くことになった。土壌条件は良好ではないが,西側の断層線に小谷が形成され,土壌の堆積により全山が保護されたことから谷筋を中心に,いわゆる春日杉が生育し,特に御蓋山は西麓の春日大社の神山として知られるようになった。古くは焼畑と思われる山焼きが付近でも行われていたが,承和8年以後は山の狩猟・伐木が禁止された(続後紀)。そのため山全体に原始林が残り,北接する草山の若草山とは好対照をなす。また,水源としても優れ,小河川ながら佐保川・吉城川・率川・能登川などの源流にもなり,香山(高山)は水神を祀る。西麓には神護景雲2年創建と伝えられる春日大社があり,その西側に春日野が広がる。また,香山には竜神信仰もあり,中世には雨乞行事も地元郷民によって行われた。御蓋山付近にある蝙蝠窟は,古く春日山一帯が石材の給供地であったことをうかがわせる。「多聞院日記」にも大仏建立の際,砥石を供給したことや郡山城築城の時にも多量の石材を切り出していることが書かれている。春日山の南は高円(たかまど)山との間に能登川沿いの小谷があり,そこを大和高原の田原と結ぶ滝坂の道(柳生街道の一部)が通る。また,新若草山自動車道および高円山自動車道と春日奥山を結ぶ万葉ドライブウエーが戦後有料で開通し,現在奈良奥山ドライブウエーとして利用されている。奥山部分は春日山とその東側の芳山との間の小谷を走り,原生林の雰囲気を楽しむことができる。なお春日山一帯は大和青垣国定公園に指定され,奈良公園の範囲にも入っている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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