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笙ノ窟
【しょうのいわや】


吉野郡上北山村の大普賢岳頂上より東約1kmの尾根南側にある岩窟。窟の入口は半円状で,幅約12m,奥行約7m,中央部の高さ約4m。大峰奥駈け75靡62番の行場。日蔵上人道賢の修行した場所と伝える。「大和名所図会」に「この所は,日蔵上人のこもりたまひし所なり。日蔵は朱雀院の御子にして(盛衰記)得道の後,吉野山椿山寺に住し,後は笙窟に入り,無言断食して冥土におもむき,蔵王菩薩金峰山の浄土を見せたまふ。しかのみならず,日蔵九年九月,王護の短札をたまふ……日蔵上人岩窟に籠りたまふ時,四,五百歳を歴たりける鬼神来たりて,無量億劫のくるしみをのがれさせたまへと願ひし事『宇治拾遺』に見えたり」とある。「新古今集」に「みたけの笙のいはやにこもりてよめる」として「寂莫のこけのいはとのしづけきに涙の雨のふらぬ日ぞなき」という日蔵上人の歌をのせる。「金葉集」にある行尊大僧正の「草の庵をなにつゆけしと思ひけむもらぬいはやも袖はぬれけり」という歌を踏まえて西行は「みたけより笙のいはやへまゐりけるに,『もらぬいはやも』とありけん折思ひ出でられて」として「露もらぬいはやも袖は濡れけりと聞かずはいかが怪しからまし」という歌を詠んでいる(山家集)。「金峰山古今雑記」には「笙窟額之事」として,「南室門」という文字は慶長12年8月高野山木喰行養の書とする。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7167452