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二上山
【にじょうさん】


「ふたかみやま」ともいう。北葛城郡当麻(たいま)町と大阪府太子町にまたがる山。標高517mの雄岳(北峰)と三角点の設置されている標高474.2mの雌岳(南峰)の2峰からなり,古代の人々はこの2峰を男女の2神にみたて,「二神山」と呼んだ。第三紀に活動した瀬戸内火山帯に属するトロイデ型の旧火山であり,付近では石器に用いられたサヌカイトや,建築材の松香石,研磨用の金剛砂の原料である柘榴石などを産出する。大和盆地の西端に東の三輪山に対峙してそびえることから,また難波より飛鳥への交通上,重要な位置にあることから,古くより「万葉集」をはじめとする多くの歌集に登場する。「万葉集」に「紀路にこそ妹山ありといへみくしけの二上山もいもこそありけれ」とあり,また雄岳頂上には,皇位継承問題で持統天皇より死を命ぜられた大津皇子と伝える墓があり,皇子のなきがらを二上山に移すとき姉の大来皇女は悲しみをこめて,「うつそみの人なるわれや明日よりは二上山を兄弟とわが見む」と詠んでいる。さらに雄岳頂上には,葛城二上神社も鎮座する。二上山の大和側には中将姫伝説と当麻曼荼羅で有名な当麻寺や牡丹で有名な石光寺が位置し,河内側には聖徳太子・推古天皇・孝徳天皇などの墳墓が築かれ,「河内飛鳥」と呼ばれるほど歴史的風土を残した地域がみられ,二上山の北側鞍部を通る穴虫越,南側鞍部を通る竹内越の各街道により両地域は密接なつながりをもっていた。また,北方には県天然記念物の奇勝屯鶴峰がある。山麓の村々では「岳のぼり」の行事が毎年4月23日に行われる。これはふもとの村々がみな弁当を携えて二上山に登り,一日を行楽に過ごす行事である。「西国三十三所名所図会」にも「此の日は山上に酒の上温,肴の煮売,或は覗からくり,放下師など出て賑はし。隣村の老若男女,嶮岨をこととせず登りて群集す」とにぎやかな岳のぼりの風景が記されている。当山は金剛生駒国定公園の一部に含まれ,一年を通して登山者やハイカーが多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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