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不動窟
【ふどうのいわや】


吉野郡川上村柏木の東熊野街道(国道169号)沿いにある鍾乳洞で,大峰入峰の行場。「大和名所図会」に「窟の口窄隘くして傴して入る事数百歩なり。窟中に滝あり。水源窮むる事なし。下流,吉野川に潜通す」とある。「吉野郡名山図志」には以下のように記す。「川に近き事五,七間,炬火にて入る。洞内名所左のごとし……釣鐘 一之門 二之門(この二門は腰をかがめて入る)行者笈 錫杖 三之門(一,二之門に同じ。穴低くして腰をかがめ入る)綱緒石 この処,道の中心に二尺ばかりの高さにして,廻り半抱へほどなる石あり。この石に縄を打ちかけ,内へ下だり入る。その足だまりは,ぬめりたる石にして,五尺ばかり底へすべり入ると,自然に止る処に,少し出たる石有り(今は縄を用ひず。石の上よりすべりて通る)。その次を,胎内くぐりと云ふ。そこを過ぎて不動滝あり……滝の長さ二間ばかり。洞の空より落ちていづくより水の出る所をしらず。水音すさまじく雷鳴し,足の下,石の間を滝水漲り流る。この流れを三途川と云ふ。水の末は,洞の内に入りて,外に流れ出ず,奇といふべし(按ずるに,滝にはあらず,洞中にわき出る水の流れ出るなり。上より流れ落ちる水,滝のやうにおもはるるなり。その水上の洞の下に流れ入りて吉野川に潜流す……)二重目の洞内,四方巌面彫付けたる像,左のごとし。十三仏 釈迦 三尊弥陀 制多迦 衿羯羅 不動 千手 大日 行者額板 大黒……いずれも鍾乳牀なり。右の像を炬火にて照らし見畢りて,もとの穴へ潜り帰るなり」。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7169266