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御蓋山
【みかさやま】


三笠山とも書く。奈良市街の東部,若草山の南に位置する山。春日山の主峰。標高283m。春日断層崖北端に噴出した三笠火山群に属し,山体は主に複輝石安山岩からなる。山名は山容が笠を伏せた形をしていることから名付けられた。「東大寺山堺四至図」に「御蓋山」の注記がみられる。「万葉集」巻3に「高按の三笠の山に鳴く鳥の止めば継がるる恋もするかも」(山部赤人),巻8に「大君の三笠の山のもみぢ葉は今日の時雨に散りか過ぎなむ」(大伴家持)とあり,三笠として表記されている。また,阿部仲麻呂の「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」(古今集)も有名である。江戸期になると若草山がその山容から三笠山と呼ばれるようになり,混同が生じるようになった。陸地測量部の地図においても「嫰草山(三笠山)」「御蓋山(春日山)」として,三笠山と御蓋山の存在を別のものとして記したが,昭和10年に崇仁親王の三笠宮の宮号宣賜に際して御蓋山(三笠山)と若草山の区別が判然とした。山頂に春日大社の本宮神社が祀られ,七本杉がある。東に連なる春日山とともに春日大社の境内に属していたために,森林の伐採が禁じられたことから,今も原生林で覆われ,学術的に貴重な植物相を呈し,観光的にも優れた自然資源として評価されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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