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三輪山
【みわやま】


桜井市三輪東部に位置する円錐形の山。標高467.1m。「記」「紀」には三諸山・御諸山・三諸岳と記されることが多く,大己貴神の幸魂奇魂は「日本国の三諸山」に「三輪の神」として住むとあり(神代紀第8段一書第6),孝霊天皇の皇女で大物主神の妻となった倭迹迹日百襲姫命は神が小蛇に化身したのを見て驚き叫んだので,神はそれを恥じて「三諸山」に登ったと伝承される(崇神紀10年9月条)。また,大物主神は活玉依毘売を妻としたが,毘売は夫の素姓を怪しみ,神の衣に糸をつけ糸に従って尋ね行ったところ「美和山」に至り,神の社の前に留まっていたという有名な三輪山伝説がある(古事記崇神段)。崇神天皇の皇子豊城命は「御諸山」に登り,東を向いて8度槍を突き出し,8度刀を空に振った夢を見,活目尊も「御諸山」に登り,縄を四方に引きわたし粟を食べる雀を払う夢を見たという(崇神紀48年正月戊子条)。雄略天皇は「三諸岳」の神の形を見極めようとして,少子部連蜾蠃に命じたところ,蜾蠃は「三諸岳」に登り大蛇を捉えて天皇に見せた。ところが,大蛇の目が輝いたので天皇は恐れて殿中に隠れ,大蛇を山に放したという(雄略紀7年7月丙子条)。「万葉集」には雲,花のつぼみ,麻木綿,音高く流れる川などが三輪山の題材として数首詠まれている。三輪山は三諸山とも称されるが,飛鳥や竜田の神奈備山を示すこともあり,いずれか不明な歌もある。以後「古今集」「新古今集」にも紀貫之や慈円により詠まれ,さらに「蜻蛉日記」「千載集」「梁塵秘抄」には,「三輪の山本」の名が見えるが,これは杉の繁茂する三輪山山麓を題材としている。なお,「万葉集」巻3の長忌寸奥麿の歌に見える「神の崎」(265)は,三輪山の南側にある尾崎の突端部を称したとされる(旧跡幽考・大和志料)。なお当山を詠った歌には「三輪山をしかも隠すか雲だにも情あらなも隠さふべしや」(万葉集18),「三諸つく三輪山見れば隠口の泊瀬の檜原思ほゆるかも」(同前1095),「春山は散り過ぐれども三輪山はいまだ含めり君待ちかてに」(同前1684),「三輪山をしかもかくすか春霞人に知られぬ花や咲くらん」(古今集94),「心こそゆくえも知らね三輪の山杉のこずゑのゆふぐれの空」(新古今1327),「我庵は三輪の山本恋しくばとぶらひきませ杉立てる門」(古今集982),「わりなくもすぎ立ちにける心哉三輪の山もと尋ね始めて」(蜻蛉日記),「春くれば杉のしるしも見えぬかな霞ぞたてたる三輪の山本」(藤原頼輔 千載集)などがある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7169763