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大和高原
【やまとこうげん】


県の北東部に位置する高原。西は南北に直線状に走る春日断層崖にて奈良盆地に接し,南は初瀬川,宇陀川の構造谷により宇陀山地と境する。北は京都府下にわずかに入り木津川構造谷により区切られ,東方は三重県下で伊賀盆地に落ち込んでいる。四周をほぼ完全に断層で画された地塁をなし,高原の高度分布は南部で標高500~600m,北部で200~300mを示し,全体として北方へ傾動している。主に花崗岩類よりなり,細かく谷に刻まれた小起伏面が広がるが,高原内にも断層が発達し,小起伏面の高度分布が急変するところがある。それら高原内部の断層崖下には柳生・狭川などに小盆地が開けている。高原中央部に丸味を帯びた優美な姿で突出する神野山はその北西方の一体山とともに堅牢な斑糲岩よりなる残丘であり,高原南部には室生火山群の一部をなす貝ケ平山・額井岳などが突出している。また高原上には中新世の礫岩や砂岩・泥岩が分布するところがあり,花崗岩地域に比べさらに起伏が小さく,谷の密度も小さく,谷幅は広く谷底平野が発達してなだらかな地形を呈している。天理市東部の福住,山辺郡都祁(つげ)村の友田・白石付近はその好例である。高原上に発する主要河川は北方に傾動する高原面の地表傾斜に必従的に北流する白砂川・布目川であり,それらは高原北縁において回春し,高原を刻む峡谷を形成している。高原の東部では名張川が深い峡谷を連ね,先行性の流路を形成しつつ北流している。名張川が木津川に合流する直前に高山ダムがあり,布目川には奈良市への上水の供給を主目的とする布目ダムが建設中である。梅の名所として知られる月ケ瀬は名張川の峡谷に面し,白砂川が木津川に合流する地点の東岸上に後醍醐天皇の笠置山の行在所跡がある。奈良盆地が国中(くんなか)と呼ばれたのに対し,当高原地域は東山中(ひがしさんちゆう)と呼ばれた。高原上の谷底平野には水田が開け,緩斜面に広がる畑では高原の冷涼性を生かした野菜の抑制栽培が行われるが,今日では茶の特産地である。高原を横断して走る名阪国道に近く,都祁村針に大和茶広域流通センターがある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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