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扇ケ浜
【おうぎがはま】


紀州舞子・大浜ともいう。田辺市の会津川河口から南東に扇形状に延びる砂浜海岸。海岸線は1.5km。白砂青松の海岸で,浜の成因は,新生代第三紀層の沈水海岸である田辺湾に会津川の運ぶ土砂や沿岸流によって砂丘が生まれ,その砂丘の成長による海退で弓状の海岸ができあがったものと推察される。浜の西に安政元年佐久間象山の門弟柏木淡水が造成した砲台は,品川砲台より早く造られたといわれ,田辺湾に向かって偉容を誇っていたという。浜の北と南に江川港・磯間港があり,一本釣り・焚入網漁の根拠地として重要で,カツオ・アジ・サバ・イサキ等の水揚げがある。また明治22年には商港が江川川辺りから移され,昭和2年文里(もり)港に移るまで田辺町の玄関であった。また海水浴場として一時臨海学校も開かれるなど盛況ぶりであったが,砂礫の供給の減少により砂浜が後退,砂の流失防止用テトラポッドが幾条も延びる殺風景な景観になった。現在海水浴場は磯間近くの三壺崎(さんこざき)に移っている。扇ケ浜の松林は広く,根上がり松など老松も多く,近在の行楽の地であったが,昭和19年戦争中に大部分が伐採され,また松食虫の被害も受け,老樹はほとんどなくなった。現在,都市公園として整備され,噴水・広場・遊具も設置され,また随所に石碑がたつ。昭和56年には国鉄紀勢本線紀伊田辺駅から扇ケ浜に直進する田辺大通りが開通した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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