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逢坂峠
【おうさかとうげ】


西牟婁(にしむろ)郡中辺路(なかへち)町の福定と近露の間にある峠。標高549m。富田(とんだ)川と日置(ひき)川の分水嶺で,旧二川村と旧近野村の村界でもあった。相阪峠・合坂峠とも書かれ,また近露側が急峻なため古くから大坂とも呼ばれる。かつての熊野街道は十丈峠から悪四郎山麓を通り,尾根伝いに柚多和(ゆうがたわ)から当峠に至り,ここから東折して大坂本王子から津毛川の谷へ降り近露へ向かった。永保元年藤原為房の日記に「大坂の草庵に着く」とある。近世の紀行文に「茶店一軒あり,餅しんこ酒等あり。此所水甚不自由也」とあり,峠に茶屋のあったことがわかる。新生代第三紀砂岩・頁岩の互層に砂岩層が貫入,地質構造が乱れ破砕されているため,表面は風化して崩れ易く,しばしば交通の妨げとなっている。明治初年この峠を越えた陸奥宗光の父伊達千広は「此山路に石屑多し,これをくづれ沓と言ふ」(三つの山踏)と述べている。峠道に昭和3年6人乗りのバスが開通し,次第に車も大型化し,交通量も増加,そこで峠より100m下がった地点に隧道掘削が計画され,5年余の歳月をかけて昭和20年,長さ550m,幅4.5m,高さ4mのトンネルが開通した。田辺~奥熊野間の交通を円滑化した。国道311号の隧道に昇格したものの九十九折の峠道は近代的なモータリゼーションに対応しにくいので,さらに高度の下がったところに新逢坂トンネルの付替えが計画されている。計画によれば,全長1,400m,車道幅8mの予定。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7170682